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境界型に対する介入

糖尿病船橋 境界型の発掘

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境界型の発掘

糖尿病に対する関心の高まりのせいか、軽度の耐糖能異常で病院を受診するケースが増えているように思う。境界型(IGT)の発掘が多い。厳密にはこれらの人に保険病名はつけられないし、投薬もできないことになっているので基本は栄養指導と運動療法の指導を行い、3ヶ月後に再来院を指示すると言うパターンが多い。

その一方で、大規模臨床試験ではIGTに対しても薬物を用いた介入をすると良いことがあるよ、と言っている。やったほうが良いとは思うが、わが国では保険適応の問題がある。無理矢理病名を付ければ良いだろう、と言ってしまえばそれまでなのだが、モラルハザードの問題となる。実際に病気で、追加病名がないと高額負担となる人を救済する場合とはわけが違うので。アカルボースを投与する話とメトホルミンを投与する話があるが、前者は特に有効と思われる。

1.アカルボース(商品名:グルコバイ)を用いた介入(NMOより引用)
αグルコシダーゼ阻害薬がIGT者の心血管疾患を3年で5割、高血圧発症を4割抑制--STOP-NIDDMサブ解析より
この研究は、糖尿病の発症リスクが高いIGT者1400人を対象に、糖尿病の発症予防効果をみた「STOP-NIDDM」(Study TO Prevent Non-insulin-dependent diabetes mellitus)試験のサブ解析。同試験では、プラセボ群よりアカルボース群で、相対的に25%糖尿病の発症が抑制されるとの結果が得られている。

今回のサブ解析は、「心血管疾患」と「高血圧」について、発症率をプラセボ群とアカルボース群とで比較したもの。プラセボまたはアカルボース(1回量:100mg)を1日3回服用、平均3.3年後の予後を比較した。対象者の平均年齢は54.5歳、男女比はほぼ半々で、体格指数(BMI)は30.9。試験開始時の血圧の平均値は、アカルボース群が131.4/82.8mmHg、プラセボ群が130.9/82.0mmHgで、アカルボース群の52%、プラセボ群の50%が高血圧(降圧薬非服用時の血圧値が140/90mmHg以上)と診断されていた。

なお、プラセボ群のうち29人、アカルボース群の32人は、データ不十分などの理由により解析から除外された。また、アカルボース群のうち211人(同群解析対象者の31%)、プラセボ群の130人(同:19%)は、副作用などのため試験から早期脱落しているが、解析はこれらの脱落者も含めたITT(intent-to treat)形式で行っている。

その結果、追跡期間中にプラセボ群(解析対象人数:686人)の32人、アカルボース群(同:682人)の15人が、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの心血管イベントを発症。血圧など主要な危険因子で補正後も、ハザード比は0.47(95%信頼区間:0.24~0.90)となり、アカルボース群で相対的に53%、心血管イベントを抑制し得ることがわかった。

また、追跡期間中に新たに高血圧を発症した比率は、アカルボース群が11%(78人)で、プラセボ群の17%(115人)より有意に低いことが判明。主要な危険因子で補正後のハザード比は0.62(同:0.45~0.86)となり、高血圧の新規発症を相対的に58%抑制できるとの結果になった。

このサブ解析は、食後高血糖が心血管疾患の危険因子であるとの仮説を検証した初のプラセボ対照介入試験だが、興味深いことに、アカルボースによる食後高血糖の改善度(75gブドウ糖負荷試験=OGTTの2時間値で評価)と心血管イベントの発症との間に有意な相関は認められない。アカルボース群では、血圧やBMI、腹部周囲径など他の危険因子が有意に改善されており、これらの複合的な効果により心血管イベントの抑制効果が現れた可能性があると研究グループは考察、OGTT2時間値は同薬の効果を評価するマーカーとしては適切ではない可能性もあると指摘する。

いずれにせよ、“食後高血糖への介入”が直接あるいは間接的に心血管イベントを抑制し、糖尿病だけでなく高血圧の新規発症をも予防したことの持つ意義は大きい。IGT者を医療の対象とすべきかとの議論はあるものの、αグルコシダーゼ阻害薬などによる、食後高血糖をターゲットとした介入戦略は、治療・予防の両面から今後も精力的な探求が進められるだろう。より副作用が少なく、服薬を継続しやすい(服薬回数が少ない、あるいは服薬方法が容易な)薬剤での効果検証も待たれるところだ。(引用終わり)
グルコバイ(アカルボース)発売元のバイエルのMRさんは盛んに「心血管イベントの抑制」をアピールしている。関連記事をご覧いただきたいが、ベイスンでグルコバイを迎え撃つ武田はSTOP-NIDDMもどきをやっているようである。同様にベイスンでも心血管イベントを抑制できれば素晴らしい。
※2009年7月追記:ベイスンのエビデンスは「Victory study」として結実した。

2.メトホルミン(商品名:メルビン)を用いた介入
生活様式への介入またはメトホルミンによる 2 型糖尿病発症率の低下
Reduction in the Incidence of Type 2 Diabetes with Lifestyle Intervention or Metformin
Diabetes Prevention Program Research Group
背 景
米国では成人の約 8%が 2 型糖尿病である.複数の危険因子 ―空腹時と経口糖負荷後の血漿グルコース濃度の上昇,超過体重,運動をしない生活様式― は,もとに戻すことができるかもしれない.われわれは,生活様式介入プログラムまたはメトホルミン投与によってこれらの因子を修正することことで,糖尿病の発症を予防または遅延させることができるという仮説を立てた.
方 法
空腹時および経口糖負荷後の血漿グルコース濃度が高い非糖尿病被験者 3,234 例を,プラセボ投与群と,メトホルミン(850 mg を 1 日 2 回)投与群と,体重を 7%以上減量し,1 週間に 150 分以上の運動をすることを目標とした生活様式変更プログラム群とに無作為に割付けた.参加者の平均年齢は 51 歳,平均体格指数(kg で表示した体重を m で表示した身長の 2 乗で除した値)は 34.0 であった;68%は女性で,45%は少数民族であった.
結 果
平均追跡期間は 2.8 年であった.プラセボ群,メトホルミン群,生活様式群の糖尿病発症率はそれぞれ,100 人‐年当り 11.0,7.8,4.8 例であった.プラセボと比較して,糖尿病発症率は,生活様式への介入では 58%(95%信頼区間,48~66%),メトホルミン投与により 31%(95%信頼区間,17~43%)低下した;生活様式への介入は,メトホルミン投与よりも有意に有効であった.3 年間に糖尿病を 1 例予防するには,6.9 人が生活様式介入プログラムに参加し,13.9 人がメトホルミンを投与されなければならない.
結 論
生活様式の変更およびメトホルミン投与は,双方とも高リスクの人の糖尿病発症率を低下させた.メトホルミン投与よりも生活様式への介入のほうが有効であった.
(N Engl J Med 2002; 346 : 393 - 403 : Original Article.)

まあ、運動療法には負けてしまうわけだが、メトホルミンは激安なのでコストパフォーマンスは高い。
なんと、メトホルミンを投与したほうが運動療法よりもコストは安いという。NMOから引用する。
2型糖尿病の発症ハイリスク者を対象に行われた介入試験「DPP」(Diabetes Prevention Program)で、介入にかかった直接医療費は、メトホルミン群が一人当たり3年で約2500ドル、強力な生活指導群が約2800ドルであることが明らかになった。一方、交通費や運動・買い物に要した時間(労働損失で換算)などの直接非医療費は、強力な生活指導群でメトホルミン群より約1500ドル高く、介入以外の直接医療費減少分を差し引いても、強力な生活指導群の方が総額では1000ドル以上高いとの結果になった。
これは悩ましい。「糖尿病」ということにしてしまって、メルビンを処方した方がコストは安いことになる。まあ、そうは言っても運動のほうが効果があるので、運動してもらうのが一番良いのだが。

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