糖尿病内科

HbA1c値の急激な低下よりも重篤な低血糖が死亡率増加と関連している――ACCORD試験より

21/07/2008

HbA1c値の急激な低下よりも重篤な低血糖が死亡率増加と関連

accord study

accord study

厳格な血糖コントロールによる死亡率の増加で物議を醸したACCORD studyだが、注目された死亡率増加の原因に決着がついたようだ。やはり「重篤な低血糖」が良くないという結論に落ち着いた。

いかに低血糖を起こさないで厳格な血糖コントロールを行うかが重要になってくる。

働く2型糖尿病患者の治療薬に関する意識調査

日本イーライリリーが40~50代の働く2型糖尿病患者に、「治療薬などに関する意識調査」を実施し、先日その結果を発表した。仕事をしながら糖尿病を治療している患者に治療薬に関する意識調査の結果。2型糖尿病患者の治療服用遵守率は44%。まあ、そんなものだろう。 調査では、

  • 40~50代
  • 糖尿病を治療中
  • フルタイム勤務
  • 複数の経口薬で治療

を続けている2型糖尿病患者390名を対象に治療薬などに関する意識調査を行った。

働きながら糖尿病の治療を続けるポイントとして、

  1. 効果が実感できる薬であること
  2. 外出中に薬を飲んだり注射したりする必要がないこと
  3. 薬に回数が少ないこと

を望んでいることが分かった。

2型糖尿病は生活習慣病なので、なかなか順守が難しい。

服薬を守っていない患者が多い

医師から薬を処方され、「1日3回、毎食後に服用しなさい」と言われても、大部分の患者は守れない。にんげんだもの。

Q:あなたは医者から処方された薬を医師の指示道理きちんと服薬できていますか? という問いに、「きちんと飲めている」と答えた人は44.9%。妥当な線だろう。

複数回服薬を指示されている患者で、「指示通り服薬できていない」のは、

  1. 平日の夕食後
  2. 休日の夕食後
  3. 休日の朝食後

の順番で多く、服薬の遵守と守れない理由は、

  • 外出先に薬をもって行くのを忘れる

というのが最も多く57%だが、「外出先に薬をもって行くのを忘れる」という患者が服薬を忘れるのが最も多いのは、「平日の夕食後」である。

イーライリリー社は、「外出先に薬を持って行くのを忘れる患者は、様々なタイミングで服薬できていない。」と分析する。

治療目標達成は10%

Q:医師からいわれている「目標の血糖値」を達成できていますか? という質問に対して、「達成できている」と答えた患者は10%で、「まあまあ達成できている」という患者を含めても42%、そんなものでしょう。

糖尿病患者が望んでいること

糖尿病患者は服薬の遵守ができておらず、治療目標である血糖値の管理ができていない。

患者の希望とは?

Q:あなたの生活スタイルに合った治療薬が欲しいか? については、93%の患者がYesと答えているが、当然だろう。
しかし、

Q:あなたの生活スタイルに合った治療薬について医者の相談したことがあるか? については、62%がNoと答えている。

医師の処方に従っているということを意味する。医師に相談しない理由として、

  1. 飲む量や回数が多いのは仕方が無い
  2. 医者やスタッフは忙しそうだから
  3. なかなか病院に行けないから

と答えており、江戸時代の朱子学の残影か、大人の社会人としてのマナーが色濃く投影されている。

ジェネリック医薬品の活用や、週一回製剤など、患者側からの要望があれは応える用意はできているが、日本特有の社会人マナーが邪魔しているのが伺える。

注射薬には誤解がある

糖尿病の治療では、1型糖尿病患者、その他でもインスリン依存状態の患者を除けば、内服でなんとかなる患者は少なくない。

Q:注射薬に対する抵抗感はありますか? という質問には、ややある も含めて82%が抵抗があると答えている。

そしてその理由としては、

  1. 面倒そうだから
  2. 重症な感じがする
  3. 飲み薬との両立が大変
  4. 薬の値段が高そうだから
  5. 痛いから
  6. 怖いから

と、効果とは全く関係ないことで拒否感を感じているのだ。
現実を直視する姿勢が求められる。

しかし、

Q:より良い血糖コントロールのために薬を追加する場合には? という質問では、12%のヒトが、

  1. 週1回ならできそうだ
  2. 効き目がありそうだ
  3. これ以上飲む薬を増やしたくない

という理由で注射薬を選択すると答えているが、「治療に積極的な患者」だといえる。

治療をしている糖尿病患者は全体の6割

この調査では服薬の遵守率が非常に低いことが分かったが、その原因はどこにあるのだろうか。
厚生労働省の「2013年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる者)の割合は、男性16.2%、女性9.2%で、2006年調査に比べ糖尿病有病者は増加傾向にある。30歳代男性における糖尿病検診での高血糖などの異常所見者が事後指導を受診している受診率は、過去 10 年間で 40%から 60%と増加してきたが、健康診断で「糖尿病の疑いがある」と診断されても、その後に受診している者は6割しかいないのだ。さらに、糖尿病治療の継続率は 45%から 56%と上昇しているものの、きちんと治療を継続している者も6割に過ぎない。

その理由として、

  1. 糖尿病には自覚症状がない
  2. 糖尿病は生命の危機感がない

という困った現実がある。

厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、平成21年1年間の死亡総数のうち、糖尿病は1万3,987人であった。 全死因のなかで、男性は7,399人、女性は6,588人で9位が糖尿病となっている。男女合計では上位10位以内に入らなかった。

しかし、これらの数値には、糖尿病によって頻度が高くなる心疾患や脳血管疾患などの死亡数は含まれていない。主な死因の死亡数

  • 第1位 悪性新生物 36万5,000人
  • 第2位 心疾患 19万7,000人
  • 第3位 肺炎 12万4,000人
  • 第4位 脳血管疾患 11万9,000人

であるが、心疾患、脳血管疾患による死者の大部分は糖尿病による血管障害に起因する死亡である。この現実を直視する必要がある。

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