糖尿病内科

妊娠糖尿病の定義・診断基準の改訂

30/12/2009

妊娠糖尿病の定義・診断基準の改訂

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妊娠糖尿病の定義と診断基準が改訂される見通しとなった。従来の「妊娠糖尿病」は、もともと糖尿病であったが、妊娠に伴って初めて発見された例も含めることになっていたのだが、今度の改定によって「明らかな糖尿病」は妊娠糖尿病から除外されることになる。新たな診断基準では空腹時血糖値のカットオフ値がより厳しくなっており、妊娠中に生じた軽度の耐糖能障害をより発見しやすくなるメリットがありそうだ。

妊娠糖尿病の定義・診断基準はこれまで,世界的に乱立している状況にあった。わが国では日本糖尿病学会が1999年に作成した糖尿病の診断基準において,妊娠糖尿病にも言及。日本産科婦人科学会の委員会報告を踏襲して,「妊娠中に発症もしくは発見された糖代謝異常」と定義し,75g経口糖負荷試験(OGTT)の結果に基づき,

(1)空腹時値100mg/dL以上,
(2)1時間値180mg/dL以上,
(3)2時間値150mg/dL以上

のうち2 つ以上を満たすことを診断の要件としている。

しかし,この現行診断基準に対しては,一部研究者の間で発表直後から異論が噴出し,早期の改訂を求める声が上がっていた。現行診断基準には上限値が設けられていないため,「明らかな糖尿病」も含めてしまうというのがその理由だ。明らかな糖尿病が奇形,網膜症などの母児に与えるリスクは,明らかな糖尿病を除いた妊娠糖尿病に比べはるかに大きく,全く異なる管理が求められるという。

このようなか昨年(2008年),HAPO study(N Engl J Med2008; 358: 1991-2002,Diabetes 2009; 58: 453-459)の結果が発表された。HAPO studyは妊婦約2万5,000例を対象にOGTTを施行し,母体血糖値と妊婦および胎児における各種リスクとの関係を検討したもの。国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)はその結果を踏まえて,今年9月に妊娠糖尿病の新診断基準を発表,世界統一基準とすることを提唱していた。

日本糖尿病・妊娠学会ではこのような国際動向を受けて,学会内に妊娠糖尿病診断基準検討委員会を設立し,わが国の対応について検討してきたが,IADPSGの新診断基準を採用する方針を固めた。

定義

妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常。明らかな糖尿病は含めない

診断基準

妊娠糖尿病

75gOGTTにおいて次の基準の1つ以上を満たした場合に診断する。

1. 空腹時血糖値 ≧92mg/dL
2. 1時間値 ≧180mg/dL
3. 2時間値 ≧153mg/dL

※ただし明らかな糖尿病である場合は除外

明らかな糖尿病

以下のいずれかを満たした場合に診断する。

1. 空腹時血糖値 ≧126mg/dL
2. HbA1C ≧6.1%(米国では≧6.5%)
3. 随時血糖値 >200mg/dLの場合は空腹時血糖値かHbA1Cで確認
4. 糖尿病網膜症が存在

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