脂質異常症

LDL-C直接測定法

06/05/2010

LDL-C直接測定法

rosuvastatin

rosuvastatin

日本動脈硬化学会がLDL-C測定法について、急速に普及しつつある直接測定法について,現時点では測定精度が十分なレベルに達していないとの認識を示し,LDL-C値は「総コレステロール(TC)−HDLコレステロール(HDL-C)−トリグリセライド(TG)/5」というFriedewaldの式(F式)により算出することを推奨する声明を出したことで波紋が広がっている。

 過去のTC値をを指標とする方式では、HDL-Cが高くLDL-Cは正常な人も異常とされる問題点があった。LDL-Cに着目する考え方は悪くないが、これまでに蓄積されてきたエビデンスのほとんどはTC値によるものであることに注意が必要だ。2007年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」においてLDL-Cの測定法として一次的に推奨したのはF式である。しかし、F式はTGを含んでいるため、食後やTGが400mg/dL以上の異常高値を示す場合には使用できないという弱点がある。本来、LDL-C直接測定法はそのような場合の二次的な測定法という位置付けであった。

 ガイドラインの推奨はこうなっていたのだが、特定健診制度においてLDL-Cが測定項目に取り入れられたことがきっかけになり、直接測定法が急速に普及した。特定検診においては受診者が食後に採血を受ける可能性が高いと予想されためだろう。現在では特定検診にとどまらず、日常臨床においてもLDL-C直接測定を行っているケースが多い。1日数十人の外来患者全員の脂質検査結果をF式でいちいち計算するとトータルでは相当な時間になる。LDL-C直接測定ができるようになったことでこの手間が無くなった。正直とても嬉しかった。しかしその精度の信頼性がまだ十分なレベルに達していないことが、現在問題となっているのだ。

 日本動脈硬化学会は以下の4項目を声明として発表。一般臨床においてはF式の使用を基本にするよう呼びかけている。LDL-C直接測定法の精度はだんだん上がっているようなので、未来永劫F式を使えというわけでもなさそうだ。精度が上がれば時期ガイドライン改定では直接測定法を大きく評価することもあるようである。臨床医としては直接法の精度アップを切に願う。F式に完全にサヨナラできる日が早く来ることを。

  1. LDL-Cの直接測定法については,今後標準化,さらなる精度管理ならびに情報の透明化を強く希望する。
  2. 現状では,LDL-Cは一般診療の場ではF式で求めることを基本とする。したがって,食後に来院した患者については,空腹での再診を求める。
  3. 特定健診については,TCを測定項目に加えることを強く希望する。
  4. TGが異常高値を示す場合は,リスク管理の指標として,TC-HDL-Cで表すnon-HDL-Cを参考とする。

-脂質異常症