甲状腺

バセドウ病患者の妊娠・遺伝

23/11/2012

バセドウ病になっても妊娠・出産はできる

バセドウ病

バセドウ病

バセドウ病にかかった女性も妊娠・出産はできます。妊娠中にバセドウ病にかかってしまっても、治療して赤ちゃんへの影響を最小限に抑え、無事に出産する人は大勢います。

しかし、妊娠中のバセドウ病に危険はあります。妊娠中にバセドウ病の状態が続くことは赤ちゃんにとってもお母さんにとっても危険なので、元気な赤ちゃんを産むためには、バセドウ病を慎重に治療する必要があります。

妊娠中のバセドウ病の危険性とは?

バセドウ病は、のど元にある甲状腺のどぼとけのすぐ下にある、人体で最大の内分泌腺(ホルモンを出す臓器)。甲状腺ホルモンを分泌する(こうじょうせん)という臓器から、甲状腺ホルモン全身の代謝を活発にしたり、神経を興奮させたりする働きをもつホルモンが出過ぎてしまう病気です。

治療しないで甲状腺ホルモンが多い状態が続いた場合、妊娠高血圧症、低出生体重児2500g未満で生まれた新生児のこと。早産が原因の場合と、正期産であっても発達不良のために起こる場合がある流産、早産・正期産以前、つまり妊娠37週0日よりも前に赤ちゃんが生まれること。ただし妊娠22週未満の出産は含まない、死産の危険性があります。また、甲状腺クリーゼという命に関わる状態になることもあります。

妊娠を考えている女性でも、非常に重いバセドウ病で妊娠すると危険性が高いと予想された場合、手術によって甲状腺ホルモンを適正に戻せるまで、妊娠は勧められません。

また、バセドウ病の治療の中には赤ちゃんに影響する恐れがあり、妊娠中はやめないといけないものがあります。やはりその場合も手術が勧められます。

妊娠中のバセドウ病と紛らわしい変化

妊娠初期(7-15週)は、甲状腺ホルモンが増えることがあります。妊娠初期に甲状腺ホルモンが増えるのはバセドウ病ではなく、正常な体の変化です。

しかし、もしバセドウ病が隠れていたら、正常な変化と紛らわしくなってしまいます。そのため、妊娠初期に甲状腺ホルモンが増えた場合は、バセドウ病が隠れていないか調べるため、検査が必要になることがあります。ただし、妊娠の可能性があれば一部の検査は使えません。

妊娠中のバセドウ病はどうやって治療する?

バセドウ病の治療には、甲状腺ホルモンを正常な量まで減らすため、手術や薬を使う方法があります。

妊婦がバセドウ病の治療を行うときは、治療による効果だけでなく、治療がお腹の子供に悪い影響を与えないかも考えなければいけません。バセドウ病の治療による影響について説明します。

妊娠中の手術はOK

バセドウ病の手術は妊娠中に受けても問題ありません。妊活中の女性、妊娠を考えている女性にとって手術は良い治療法です。ただし、妊娠初期は手術には向かない時期なので、妊娠5ヶ月から7ヶ月ごろまで待って手術するのが安全です。

手術の問題点を挙げます。

  • 妊娠初期には適していない
  • 1週間前後の入院が必要
  • のどに傷痕が残る
  • 簡単な手術ではないので、習熟した医師に切ってもらう必要がある
  • 首を通る神経を傷付けると、しゃべりづらい、飲み込みづらいなどの症状が出る
  • 副甲状腺を取ることにより、けいれん、不整脈、感覚異常などが出ることがある

まれに問題が起こるとはいえ、ほかの治療法にも問題点はあります。

総合すると妊娠中のバセドウ病の治療に手術は良い方法です。

妊娠中に飲まないほうがいい薬がある

バセドウ病の治療に使う薬で、チアマゾール(メルカゾール)というものがあります。メルカゾールを妊娠初期に飲んでいると胎児に悪影響が出る可能性があります。

そのため、特に妊娠4-7週の間はメルカゾールを飲まないようあらかじめ気を付けるべきです。代わりにチウラジール(プロパジール)やヨウ化カリウムを飲めば安全です。

妊娠4-7週というのは、まだ妊娠に気付いていないことも多い時期です。生理が遅れているので妊娠かもしれないと思ったときはすでに4週が過ぎています。そのため、まだ妊娠していなくても妊娠を考えている人はメルカゾールを飲むのをやめなくてはなりません

バセドウ病の治療中の女性が妊娠したいと思ったら、必ずかかりつけのお医者さんに相談しましょう。治療法についてもう一度考えるタイミングになります。

妊娠しているかどうかわからないときにバセドウ病になってしまったら、診察のときに最後の生理の日を忘れずに伝えましょう。

妊娠で薬の量が変わる

妊娠の前後は、バセドウ病ではない人でも甲状腺ホルモンの量が変化します。

甲状腺ホルモンは妊娠初期に増え、だんだん減ってきて出産前には正常より少なく、出産後は多くなります。

妊娠による正常な甲状腺ホルモンの変化に合わせて、妊娠中のバセドウ病の治療では、薬の量を何度も調整する必要があります。

お腹の赤ちゃんのためには甲状腺ホルモンが必要なので、妊娠中を通じて薬は少なめになります。

妊娠中はアイソトープ治療をしない

アイソトープ元素のうち、一般的なものよりわずかに重い、もしくは軽いもの。放射線を発する性質を用いて、医学検査や治療に用いられる治療は放射線を使った治療です。そのため、妊娠中にアイソトープ治療をすると子供に悪影響が及ぶ可能性があります。

妊娠中はもちろん、妊活中の女性、近い将来妊娠したいと思う女性は、アイソトープ治療をしないでください。

アイソトープ治療を終了してから6ヶ月以上経てば、安全に妊娠できるようになります。

授乳中のバセドウ病の治療はどうしよう?

授乳中にはバセドウ病の治療について気をつけなくてはならないことがあります。

母乳によって子供に影響を与えないために気を配りましょう。

授乳中はできない治療

アイソトープ治療は授乳中にはできません。アイソトープ治療をすると、放射性物質が母乳を通して赤ちゃんに届いてしまう可能性があります。妊娠中にアイソトープ治療を中止したあとは、出産して授乳が終わったら再開できます。授乳が終わっても治療後数日は子供に接触しすぎないように気を付けてください。

授乳中に気をつけたい治療

抗甲状腺薬の飲み薬も母乳を伝って赤ちゃんに届いてしまいます。母乳に入る量は微量ですので、薬の量が少なければ大丈夫です。メルカゾールなら1日に10mg以下、プロパジールなら1日に300mg以下であれば授乳中に飲んでも安全です。

バセドウ病は遺伝する?

妊娠したいと思っているときにバセドウ病になると、将来子供がバセドウ病にならないか心配になってきます。バセドウ病は遺伝するのでしょうか?

お母さんがバセドウ病になっても、子供はバセドウ病にならないことがほとんどです。安心してください。

バセドウ病でないお母さんよりはバセドウ病のお母さんの方が、子供がバセドウ病になる確率が少し高そうだということが、現在までの医学研究で言われていますが、確率が少し違うだけなので、気にするほどではありません。

バセドウ病の人が家族や親戚にいない人でもバセドウ病になります。

では、バセドウ病になってしまって、将来できる子供に病気になって欲しくないと思ったらどうすればいいでしょうか?
未来の子供のためにできることは、まずお母さん自身が健康になることです。バセドウ病をしっかり治療することが大切です。

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