甲状腺ホルモンが不妊の原因?
甲状腺ホルモンと不妊の関係についてはまだまだ知らない人も多く、不妊の検査項目にも入っていない病院がほとんどです。
甲状腺ホルモンの異常は不妊の原因の一つで、長年の原因不明の不妊が実は甲状腺ホルモンの異常だったということもあります。
ここでは甲状腺機能の低下と不妊がどのように関係しているのかわかりやすくまとめています。
甲状腺ホルモンとは?
甲状腺は口の中のノドぼとけの下にあって蝶が羽を広げたような形をしている器官です。臓器や細胞の様々な機能を正常に保ち、私たちが快適に過ごすために欠かせないホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは脳下垂体によってコントロールされホルモンの量が一定に保たれています。普段私たちは甲状腺を意識することはありませんが、ホルモンの分泌に異常が起こると体に様々な異変が現れ月経不順や無排卵など不妊の原因を引き起こすことがあります。
甲状腺ホルモンの分泌の仕組み
甲状腺ホルモンは海藻などに含まれるヨウ素を原料に合成され血液によって全身に運ばれます。その血中濃度は脳下垂体によってコントロールされ血液中の甲状腺ホルモンの量は常に一定に保たれています。
血液の中の甲状腺ホルモンが少なくなると、脳の視床下部にある下垂体から「甲状腺刺激ホルモン」が分泌され、甲状腺からのホルモンの分泌を促します。逆に甲状腺ホルモンの血中濃度が高まると、甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑えられ、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなります。
甲状腺ホルモンの異常は女性に多い?
日本人の20人に1人の割合で甲状腺に何らかの異常があると言われていますが、どんな病気かイメージできる人は少ないのではないでしょうか。バセドウ病や橋本病が代表的です。
一般的に知られていない理由としては、症状の出方がさまざまで、微熱やのどが渇きといった症状が糖尿病や高血圧など他の病気と間違われたり、無気力や物忘れなど加齢による体質の変化だと思い病気に気づかないケースも多いからだと考えられます。
アメリカの甲状腺財団の調査を日本の人口に当てはめた文献では下記のような結果が出ています。
・甲状腺の機能が活発になりすぎる「甲状腺機能亢進症」
女性が19万人対して男性は2万人
・甲状腺の機能が落ちてしまう、「甲状腺機能低下症」
60歳以上の女性260万人に対して男性が100万人
甲状腺異常の約9割が女性というのは驚きですね。女性に多い自己免疫疾患が関係していると考えられ、女性ホルモンとの関連など色々な仮説がありますがはっきりとした理由はわかっていません。
不妊の原因は甲状腺の病気かも?
甲状腺の病気の中で、甲状腺機能亢進症の代表的な病気が「バセドウ病」、甲状腺機能低下症の代表的な病気が「橋本病」です。どちらも自己抗体ができて自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の病気です。
甲状腺ホルモンは、体の形成を担当するホルモンでもあり女性ホルモンの分泌にも関係しています。甲状腺ホルモンのバランスが崩れると性ホルモンのリズムにも影響し不妊を引き起こしてしまうんです。
バセドウ病
甲状腺の機能が亢進してしまう病気の約9割がバセドウ病で、20代~30代の若い女性に多いことがわかっています。生理不順や無排卵などの症状がでて、はじめてバセドウ病とわかるケースもあります。また、流産のリスクも高いと言われています。
橋本病
橋本病は、世界で初めて論文を医学雑誌に発表した九州大学の外科医橋本策博士の名前から橋本病と名付けられた、20代後半~40代女性に多い病気です。
甲状腺ホルモンが不足すると新陳代謝が悪くなり、卵巣機能が低下して不妊に繋がると言われています。うつ病や更年期障害、皮膚病などと症状が似ていますが、甲状腺ホルモンが正常値に戻ると症状はなくなります。
甲状腺ホルモンの治療は薬がメインですが、重症化すると甲状腺の手術をすることもありますので早期発見することが大切です。
甲状腺ホルモンのセルフチェック!
不妊の検査ではとくに問題がなく、甲状腺ホルモン異常かも?と思った方は下記の項目をチェックしてみてください。
バセドウ病の主な症状 | 橋本病の主な症状 |
・頻脈や不整脈 ・動悸、息切れ ・のどが渇く ・食欲はあるのに痩せる ・血圧が高くなる ・体温が高い、汗を良くかく ・暑がりになった ・イライラしやすい ・興奮しやすい ・筋力の低下 ・指先の震え ・流産してしまう |
・首が腫れる ・のどに違和感がある ・寒がりになった ・食欲がないのに太る ・肌が乾燥する ・からだがかゆい ・からだがむくむ ・便秘がちになる ・昼間も眠い、居眠りをする ・よく居眠りをする ・やる気がでない ・排卵障害などの不妊 |
甲状腺異常を予防するには?
甲状腺機能異常の原因は分かっていませんが、自己免疫異常によって起きる病気で、ストレスも一つの要因となります。ストレスによって活性酸素が増えると、正常な細胞が攻撃されてしまいます。活性酸素を溜めないように抗酸化力のある食品を摂ることが有効です。
抗酸化作用の高い食品
【 バナナ・アボカド・ナッツ類・大豆 】
免疫力の低下も発病の引き金となることが多く、免疫力を高めることは予防につながります。免疫細胞は、腸で7割が作られると言われていますので、腸内環境を整える食品を意識して摂るようにしましょう。
整腸作用のある食品
【 ヨーグルト・納豆・玉ねぎ・ニンニク 】
免疫力を高めるためには、良く言われることですが、疲れを溜めないように十分な睡眠をとったり、運動不足やストレスの解消、1日3色のバランスの良い食事など規則正し生活が基本となります。すべてを完璧にするのは難しいと思いますので、健康的な生活を少しずつ意識してみてはいかがでしょうか。
まとめ
甲状腺ホルモンの異常は、不妊の原因になるにも関わらず、不妊の一般検査項目には入っていないことが多いんです。甲状腺の機能が正常に働いているかは、血液中の甲状腺ホルモンの量や抗体を測ることですぐに調べられますから、疑いがある場合は当院にご相談下さい。