1型糖尿病の悩みは、声に出しにくいものが多い病気です。
症状が見えにくく、努力も見えにくく、それでいて結果だけは数字で示されます。HbA1c。
血糖の波形。
低血糖の回数。これらは本来、治療を考えるための「情報」にすぎません。
けれど現実には、いつの間にか評価になり、さらに自分自身の価値を測る物差しのように感じられてしまうことがあります。「ちゃんとやっているのに、うまくいかない」
「これ以上どうすればいいのか分からない」
「こんなことを考える自分は、甘えているのではないか」そう思って、検索窓に言葉を打ち込み、
それでも答えが見つからず、そっと画面を閉じた経験はありませんか。1型糖尿病とともに生きていると、悩みを悩みとして扱えない状況が生まれます。
医師には聞きにくい。家族には心配をかけたくない。
同じ患者同士でも、比べてしまい、言葉を飲み込んでしまう。

けれど、ここで最初に伝えておきたいことがあります。

あなたが感じているその悩みは、特別でも、弱さでも、異常でもありません。
多くの場合、それは「整理されていない」だけです。


数字に関する悩み(HbA1c・血糖)

1型糖尿病の診療では、必ず数字が並びます。HbA1c、平均血糖、TIR、低血糖の回数。
どれも本来は、治療を調整するための指標です。

けれど現実には、数字を見ること自体がつらい、検査結果の日が近づくと気持ちが重くなる。
そう感じている人は少なくありません。

「また悪いと言われるのではないか」
「頑張っていないと思われるのではないか」
「この数字の自分は、ダメなのではないか」

こうした感情が生まれるのは珍しいことではありません。
なぜなら、1型糖尿病では結果が数字でしか見えないからです。

努力は見えません。夜中に目を覚まして血糖を確認したことも、
低血糖を恐れて食事やインスリン量を調整した迷いも、
仕事や家庭の中で気を張り続けてきた時間も、すべて数字の外側にあります。
それでも診察室では最後に数字だけが残る。

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
HbA1cは、あなたの努力量でも、真面目さでも、人間性でもありません。

HbA1cは、インスリンの効き、生活リズム、ストレス、睡眠、ホルモン変動、体調など、
複数の要素が重なった結果です。
同じように生活していても、同じように打っていても、数字が揺れることはあります。

もしHbA1cが「努力の点数」だとしたら、なぜ同じ努力をしても人によって結果が違うのでしょうか。
答えは単純です。HbA1cは点数ではないからです。

このページで扱うのは、どうすれば数字を良くできるかではありません。
まずは、数字と自分を切り離すこと。
数字を責める材料ではなく、状況を説明する情報に戻すこと。
それができてはじめて、次の一手を冷静に考える余地が生まれます。


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  • 低血糖が怖い(夜が不安で眠れないときに)
  • 血糖が安定しない(頑張っているのに、うまくいかない理由)

よくある質問

HbA1cが悪いと、頑張れていないと思われますか?

HbA1cは「努力の点数」ではありません。生活リズム、睡眠、ストレス、ホルモン変動、体調など複数の要因が重なって動きます。数字を人格評価のように感じてしまうのは自然な反応ですが、ここではまず「数字と自分を切り離す」ことを優先してください。

低血糖が怖くて血糖を高めに保ってしまいます。ダメですか?

低血糖への恐怖は合理的なものです。「怖いから避ける」は異常ではありません。問題は、恐怖が整理されずに固定化してしまうことです。まずは夜間・外出時・仕事中など“怖い場面”を分けて考え、必要なら主治医と具体的な対策を相談してください。

同じ1型糖尿病の人と比べて落ち込むのは普通ですか?

普通です。血糖の背景(生活、体質、仕事、支援、機器、経験)が見えないまま数字や成果だけを見ると、比較は必ず苦しくなります。比べる対象を「人」ではなく「自分の昨日」に戻すほうが、長期的には安定します。

“疲れた”“もう無理”と感じるのは異常ですか?

異常ではありません。24時間管理が続く病気では、疲労が積み重なるのが自然です。大切なのは、疲れを否定せず、何が負担になっているか(低血糖の恐怖、睡眠不足、職場の制約、完璧主義など)を分解し、対策を選べる状態に戻すことです。

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