誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎予防にタナトリル

26/06/2008

誤嚥性肺炎予防にタナトリル

誤嚥性肺炎の予防にタナトリルが有効

誤嚥性肺炎の予防にタナトリルが有効

コバシル(ペリンドプリル)は組織親和性の高いACE阻害薬

組織親和性の高いACEにはコバシル(ペリンドプリル)、ゼストリル・ロンゲス(リシノプリル)、オドリック・プレラン(トランドプリル)がある。組織親和性の高いペリンドプリルは脳内移行性も高い。ペリンドプリルはアルツハイマー病患者における認知機能低下抑制効果を示すとする論文がある。効果発現の機序は不明であるが、以下のように推測されている。

脳組織親和性ACE阻害薬が脳内に過剰発現しているACE活性を抑制し、神経細胞シナプス間隙のアセチルコリン遊離を促進することで認知機能を改善する。

アルツハイマー病病態の本質であるアミロイドベータ蛋白の脳内蓄積を抑制する

脳内ACE活性の亢進は、ACEの基質の一つであるサブスタンスPの分解を促進する。サブスタンスPは、アミロイドβ蛋白の分解酵素であるニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)でも代謝される。ACE阻害薬で脳内のACE活性を低下させてサブスタンスPが増えれば、NEPの活性が亢進し、アミロイドβ蛋白の脳内での蓄積が抑制される可能性がある。脳内移行性(中枢作用性)ACEIは認知症のリスクを減らし、非脳内移行性(非中枢作用性)ACEIはリスクを上昇させることが報告されている。認知症の患者さんにACEIを使用するなら、コバシルがひとつの選択肢になるだろう。

また、ACE阻害薬にはARBにはない血管新生作用がある。心筋虚血や脳虚血の既往のある患者さんにはARBではなくあえてACEIを処方することも考えて良いだろう。

誤嚥性肺炎の予防にタナトリル

タナトリルには「誤嚥性肺炎予防薬」としての有用性もある。今日はタナトリルの誤嚥性肺炎予防作用についてお伝えしたい。

誤嚥性肺炎はなぜ起こるか?誤嚥性肺炎は高齢者、特に脳血管障害の既往のある方に多い。これには理由がある。

「サブスタンスP」の合成が低下すると嚥下反射が起こりにくくなるのだが、大脳基底部の血管障害によって脳内のドーパミン合成が減少するとサブスタンスPの合成ができなくなるためである。

先述したようにACE阻害薬にはサブスタンスPの分解を阻害する作用がある。これが有名な「空咳」の原因でもあるのだが、これをうまく利用することで高齢者の誤嚥性肺炎を予防することができるわけである。うまいことを考えたものだ。

私は糖尿病が専門であるため、脳血管障害を合併する患者さんを多く担当する。脳梗塞の結果、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者を多数診ている。最大の基礎疾患はやはり脳血管障害だ。高血圧のある方は多く、最近まで何となくARBやカルシウム拮抗薬を処方していた。タナトリルの効果を知ってからはこういう患者さんにタナトリルを選んで使うようになっている。

タナトリル(一般名:イミダプリル)は特許切れを迎えたので安く使うことも可能だ。同様に特許切れを迎えているコバシルと並んでお勧めしたい。

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