脂質異常症

スタチン発明の対価

24/08/2008

スタチン発明の対価

rosuvastatin

rosuvastatin

クレストールという薬剤があります。HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)です。作用が強力なのでストロングスタチンという範疇に入ります。大変よく効くので、私もよく処方しています。この薬のことを調べていたところ、塩野義製薬が発明した薬であることを知りました。私は、この薬を正真正銘のアストラゼネカの薬で、塩野義は販売代理店をしているだけだと思っていたのです。正確にいうと、発明したのは塩野義なのですが、その後アストラゼネカに売却され、開発を続け世界で販売されるに至ったということです。クレストールは日本でも、世界でも売れています。塩野義はこれにより巨額の特許収入を得たそうですが、塩野義の元研究員の方が「発明に対する正当な対価を受け取っていない」として塩野義を訴えているそうです。2007年に報じられました。

高脂血症治療薬発明した塩野義製薬元研究員が提訴 発明対価8億7000万円の支払い求める

2007年3月6日 朝日新聞

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が引き起こす生活習慣病の一つ「高脂血症」の治療薬の主成分を発明したのに、会社が約1450万円の報償金しか提示しないのは不当だとして、医薬品メーカー「塩野義製薬」(大阪市)元研究員の渡辺正道さん(59)=大津市=が6日、同社に発明の対価として約8億7000万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。

1,450万円の報酬が高いか安いかはわかりませんが、青色発光ダイオードの中村修二氏を思い出します。日亜は1000億円/年の利益を得たとされ、それに対して結局「8億4000万円」で和解となりました。この判例を考えると、今回の提訴の金額は妥当なものといえるのではないでしょうか。当然、中村氏の時にみられたような産業界からの反発はあるでしょう。しかし、長期的視点に立ってみましょう。このような優秀な研究者なら米国から驚くような報酬で招請されるでしょう。そうやって人材の海外流出が続けば、日本の産業界は大きな損失を被ります。8億円は確かに巨額ですが、優秀な人には相応の待遇をしないとこれからの日本は世界で生き残っていけません。猛追してくる中国・インドの追撃をかわすには、ブレイクスルーを続け、真似のできない製品を産み続けるしかないのですから。

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