糖尿病内科

ADA/EASD 2015 Position Statements Diabetes Care2015;38:140-149

14/01/2015

ADA/EASD 2015 Position Statements

糖尿病

糖尿病

Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes,2015: A Patient-Centered Approach.Diabetes Care2015;38:140-149

ADA/EASD2012は増え続ける糖尿病薬を前に、一定の道筋を示さなければならないというやむにやまれぬ事情から成立した。様々な薬物治療間の長期的効果の比較の研究結果に乏しかったため、2012年のステートメントは説得力を欠いていた。治療のターゲットと治療戦略を分離させようと試みた。患者中心の治療方針決定。この考えは変わっていない。船橋市の糖尿病患者さんに対しても、自主性を重んじた治療方針決定がなされている。

目標血糖値

2型糖尿病患者において、血糖値は依然として血糖値は大きな注目点である。しかしながら、これは常に心血管イベント抑制の文脈において語られる。禁煙、規則正しい生活、血圧管理、脂質管理などと並んで。時には抗血小板剤も。その結果、血糖コントロールが細小血管症を抑制するというエビデンスを得た(UKPDS,UKPDS35)。血糖コントロールによる心血管イベント抑制に及ぼす影響ははまだ定まっていない。効果は一応あるのだろうが、かなり長期間かけて(10年。NEJM)出るものである。大規模スタディは極端な血糖コントロールはかえってイベントを増やすと教えてくれる(ACCORD study)。血糖コントロールの目標は個別に設定すべき。病期、低血糖の多さ、合併症、やる気などで。Fig.1

2014年と2012年の違いは、SGLT-2阻害薬の出現である。近位尿細管でのグルコース再吸収抑制、インスリン非依存性などに特徴がある。-2Kg BWloss, 血圧低下などがある。今のところその効果への評価は定まっていない。性器感染症、脱水があり、eGFRの低い症例にはふさわしくない。

ピオグリタゾンの膀胱がんリスク騒動は沈静化してきた。体液貯留、心不全のリスク。特に女性で骨粗鬆症のリスク。

DPP-4阻害薬 サキサグリプチンは心血管系にリスク・ベネフィット両者ともエビデンスはない。2年間を少し超えただけのデータだが。一方、アログリプチンの強化療法ではむしろ心不全入院が増えてしまうという報告がある。反対に、心不全リスクの多い患者に18ヶ月投与して問題ないというデータもある。今調査中、それまでは心不全患者には慎重投与がよい。

GLP-1受容体作動薬の膵安全性は確立してきている。急性膵炎・膵臓癌とも。
患者とよく相談して投薬内容を決めるように。

メトホルミンは依然として第一選択だ。安全性が高く、体重を増やさず、心血管イベントも減らしそう。米国では男がCre1.5未満、女が1.4未満まで用量調節不要。軽度CKDに対して制限を緩める要請があるが、これは厳しすぎるだろう。多くの臨床医はeGFRが45-50以下でもメトホルミンの処方を(減量して)継続しようとする。eGFR30未満が中止の目安である。メトホルミンが制限されている環境では他の薬剤を使うが、SU剤を代替に選ぶのは賢明ではない。特にグリベンクラミドは。そんな場合はDPP-4阻害薬のほうが望ましい。

併用療法

SGLT2阻害薬は単剤投与が認められているが、メトホルミンまたは他の薬剤と併用されることが多い。SGLT-2阻害薬の効果は認められているが、2nd or 3rdの療法が望ましい(Fig.2)

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の組み合わせは他の組み合わせより薬効が少ないと言われているが、GLP-1受容体作動薬との併用のデータはない。現時点ではオススメできない。メトホルミンに他剤をプラスするやり方のみ意味がある。メトホルミン単剤ではダメそうな症例にはそういうやり方が良い。HbA1c9%以上の症例だ。

注射剤併用療法

2剤併用療法でもダメなことはある。罹病期間の長い症例では、膵臓のβ細胞が弱っている。強化インスリン療法によっても目標血糖値を達成できない症例は、総じて基礎インスリンは不可欠である。2012年のステートメントにおいては、基礎インスリンに(通常メトホルミンとその他の併用薬を併用して)1-3回の超即効型インスリンアナログを追加することを推奨していた。ステートメントでは他の選択肢として、より簡単(だがフレキシビリティに欠ける)な方法としてミックス製剤を推奨していた。しかしこの3年でGLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用療法の有用性が示され、1-3回の食前インスリンを追加するのと同等もしくはやや優勢という結果を示した。より低血糖が少なく、より体重が減ると言うわけだ。GLP-1受容体作動薬追加のほうがより安全であると。少なくとも短期間では。よって、BOTでダメな症例ではGLP-1受容体作動薬もしくは食前インスリンが望ましい。肥満であったり、頻回、複数の薬剤を使い分けられない症例においてはGLP-1受容体作動薬のほうがより望ましいわけだ。BPTでダメな場合はBasal-bolus therapyだ。この段階になってくると、SGLT2阻害薬の上乗せが血糖コントロール改善、インスリン量減量のベネフィットがある。これは、肥満症例でインスリン使用料が非常に多い場合に意味がある。古いもうひとつのオプションは、チアゾリジンを併用してインスリンを減量することだ。しかし、体重減少作用は犠牲にして、体液貯留による心不全リスクが増大する。したがってこのステージで使うなら少量のみに制限して注意深く使用すべきだ。高濃度インスリンはインスリン使用量の多い症例に有効だが、処方には細心の注意が必要だし、患者と薬剤師が緊密にコミュニケーションをとる必要がある。

臨床医は患者のコスト、複雑な薬物療法の煩雑さの負担を考慮せねばならない。負担の大きすぎるレジメンは拒絶されるだろう。患者が複雑な薬物療法が実行できないなら、HbA1cの目標を現実的なもものにするか、肥満例ではbariatric surgeryを考慮すべきだ。

もちろん、栄養指導や患者教育を薬物療法と一体的に行うことは必要だ。自主性が高まる。

臨床家は2型糖尿病と思われる患者の中に1型糖尿病が潜んでいることに目を光らせていなければならない。

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