インスリン

MannKind社 吸入インスリンの開発を続けていく

10/09/2008

MannKind社 吸入インスリンの開発を続けていく

鼻から吸入するインスリン

鼻から吸入するインスリン

一時期、夢のインスリンと期待された吸入インスリン。期待とは裏腹に、各社で撤退が相次いでいる。イーライリリー社のプレスリリースによるとアルカミーズ社との共同開発は終了とのことだ。PfizerのEXuberaも終了、ノボノルディスクのAERx iDMsも終了した。唯一生き残っているのがMannkind、まだ開発は諦めないとプレスリリースを出している。

何故みなこんなに苦戦しているのか?

患者と医師の支持を得られなかったことに尽きる。太くて痛い注射針を患者が嫌がっているのは確かだが、それにとって代わるだけのメリットはない。ディスポーザブルペンの進化で、自己注射の簡便性、痛みの少なさが向上した。インスリン自己注射が苦しくないものになった。注射を怖がる幼児や子供の1型糖尿病にはこの吸入式インスリンは良い代替案になり得るが、18歳未満の使用は実績が十分にないことから禁じられていた。常温で保存できる粉末インスリンは冷蔵庫のない発展途上国には朗報だが、現実に手が出ない価格では意味がない。史上初の吸入式インスリンは売れなかった。ファイザーはいずれ年商20億ドルの大型商品と考えていたが、2008年1月-9月までで1,200万ドルしか売れなかった。サノフィ・アベンティス社から巨額の資金を投じてExuberaの世界販売権を買い取って始めた事業だが、総額28億ドルの投資が活かせなかった。発売当初から吸入式インスリン Exuberaはその使い勝手の悪さ、費用の高さ、安全への懸念が払拭できなかった。Exuberaの売上げ見通しはどんどん下がっていった。吸入装置は大きく、30cmも伸ばして使う装置は大変なものだ。インスリンの単位計算を従来の注射単位から換算する必要がある。米国人が加入している民間の健康保険会社は、自己負担額の一番高いNon-Formulary扱いである。

医師から保険会社に連絡して「この患者はこれ以外はダメなので認めて欲しい」という手続き「Prior Authorization」が求められることもあり、煩雑である。保険が効かないのでは普及しなくても仕方がない。

Exuberaを使う前には呼吸機能検査を行う必要があり、面倒だ。フォローアップの検査も必要だ。患者にとっては値段が高く・使いにい。医師側は検査が面倒だ。ハードルは高そうだ。日本国内ならば保険は効くことになるだろうが、インスリン注射で代替可能な以上、インスリン自己注射よりコストが安く設定されるとは思えない。日本国内、船橋市内で使える日が来るかどうかは微妙だ。それより進化し続ける注射型製剤に期待したい。

内服インスリンは頓挫したようだ。

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