インスリン

第3の超速効型インスリンアナログ、グルリジン(商品名:アピドラ)誕生!

19/08/2009

第3の超速効型インスリンアナログ、グルリジン(商品名:アピドラ)誕生!

apidra-solostar

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既存の2つの超速効型インスリンアナログであるリスプロ(ヒューマログ)、アスパルト(ノボラピッド)に比べて速やかな吸収・効果発現を最大のセールスポイントとするグルリジン(アピドラ)がサノフィ・アベンティスより発売された。'APIDRA'とは、素早いという意の'RAPID'の文字を並び替えた造語だそうだ。N社がAspartに使っている'Rapid'はもう使えないから生まれた言葉遊び。anagramのようだ。

先発の2つの超速効型インスリンアナログと同様、ヒトインスリンのアミノ酸配列に6量体から2量体への解離を早くするための改変が加えられ、皮下注射後の速やかな効果発現が可能になっている。ヒトインスリンB鎖3位のアスパラギン酸をリジンに、29位リジンをプロリンに置換した製剤である。

グルリジンと他の超速効型インスリンアナログとの比較についての報告であるが、グルリジンの吸収と作用をBMI30-40kg/m2で糖尿病のない例で検討すると、リスプロより早い吸収と効果がみられる1)。その後、広い範囲のBMI(20-40kg/m2)でも同様の結果が確認された2)。このグルリジンとリスプロの相違だが、薬物動態、薬学解析上リスプロとアスパルトに大差がないこと、グルリジンのみが製剤中に亜鉛を含まないこと、亜鉛はインスリンをヘキサマーの形で安定化させることから、製剤中に亜鉛含有のないグルリジンでは注射後より速やかな単量体、二量体分子の利用が可能なためと考えられる(添付の画像をご参照願いたい)。グルリジンのこの特性が実際の臨床においてどのような相違をもたらすのかに大変興味を持っているが、まだデータは少ない。今後長期にわたる検討が必要である。

わが国では「食直前投与」となっているが、海外では「食直後投与」を認められているところもあるようだ。既存の製品よりも作用発現時間がさらに短いことから「食直後打ちでも効果がある」というのが最大の売りである。食事摂取量が一定しない消化管オペ後の患者、1型糖尿病患者にシックデイルールを適用するときなどには摂食量を見てからインスリン投与量を決定することが多いが、そういうケースにこそアピドラの超速効性が活きてくる。大いに期待したい。

アピドラ注ソロスターの色は水色、一方ランタス注ソロスターの色は薄紫で、暗い場所や色覚にハンディキャップのある人でも区別しやすいよう色が使い分けられているそうだ。ちなみに、両者のお尻の部分にも差がある。同じ銘柄のシャンプーとリンスの如く、触って区別できるようになっている。

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