糖尿病内科

禁煙後に糖尿病発症リスクは短期的に上昇

11/01/2010

禁煙後に糖尿病発症リスクは短期的に上昇

smoking

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MTProの記事を読んで驚いた。禁煙に優るものは無いと常々思っているのだが、短期的であれ禁煙によって糖尿病発症リスクが上がるというのだ。確かに、「禁煙したら太っちゃって・・・」と患者に言われることは多い。

スモーカーを勢いづかせかねない結果だが、長期的には禁煙した方がリスクは減る。それに、禁煙することによって得られる(血糖以外の)動脈硬化リスク低減効果は計り知れない。我々としては禁煙をサポート(特に、長期にわたって持続させること)しつつ血糖も悪化させないようサポートしていくことが重要だ。船橋市の糖尿病患者さんにも禁煙している方が大勢いらっしゃる。

できれば禁煙していただきたいのだが、こだわりをお持ちの方も多く、頭ごなしに怒鳴りつけるようなやり方は反感を買うだけで、信頼関係を毀損しかねず、ぐっとこらえる。

2型糖尿病に対する喫煙のリスクは確立されているが、禁煙による影響はあまり知られていない。米国で行われた前向きコホート研究で、禁煙によって体重が増加することで短期的なリスクは減少するどころか、喫煙者に比べ大幅に上昇するという結果が、米医学誌「Annals of Internal Medicine」(2010; 152: 10-17)に発表された。

禁煙後12年でリスク超過が消失

米ジョンズホプキンス大学のHsin-Chieh Yeh氏らは、米国で45~65歳を対象に行われたARIC試験の1987~89年のデータから、糖尿病未発症の1万893人を9年間追跡し、喫煙歴と2型糖尿病の発症リスクの関係を調べた。4,900人は喫煙歴がなく、3,413人は過去に喫煙しており、2,579人が喫煙を継続していた。最初の3年間で380人が新たに禁煙した。

追跡期間中に1,254人が2型糖尿病を発症。年齢、人種、性などで調整して解析したところ、喫煙歴なし群に比べた糖尿病リスクは元喫煙者で1.22倍、新規禁煙者で1.73倍、喫煙者で1.31倍と、新規禁煙者が最も高かった。また、ヘビースモーカー群(30pack-year※)の糖尿病発症リスクは1.42倍だった。

新規禁煙者では、喫煙歴のない者と比べて体重と腹囲、空腹時血糖レベルの増加が顕著で、白血球数はわずかに減少していた。そこで、体重の変化と白血球数でさらに調整を行ったところ、リスクは大幅に減少した。
また、参加者の自己申告を基に禁煙後の長期的リスクを2004年まで引き続き追跡したところ、リスクが最も高かったのは禁煙後最初の3年間で(喫煙歴なし群に対する糖尿病リスク1.91倍)、リスクは徐々に低下し、12年後には超過リスクは消失した。対照的に、喫煙者ではほとんど変化が見られなかった。

60歳以上の元ヘビースモーカーは特に注意

禁煙者のうちリスクが最も高かったのは、60歳以上で禁煙前に1日20本以上の喫煙歴があり、試験開始時から4キロ以上の体重増加があったグループだった(喫煙歴なし群に対する糖尿病リスク3.44倍)。一方、4キロ未満の体重増加では、いずれの年齢でもリスクは上昇していたものの、統計学的に有意な差は認められなかった。

禁煙時には、特にヘビースモーカーでは、体重増加を抑えるなどの糖尿病対策および糖尿病スクリーニングが必要と思われる。

(MT Pro 2010年1月7日 掲載)

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