鼻に噴霧するインスリン
インスリン注射は嫌だ!他の方法は無いの?
一時期脚光を浴びた吸入インスリンが軒並み頓挫するなか、「鼻に噴霧するインスリン」が登場するかもしれないというニュース。日本経済新聞8月13日夕刊1面に掲載されていたからお読みになった方も多いだろう。
鼻に噴霧するインスリンを開発しているところがある。
インスリンを鼻に噴霧、糖尿病治療注射いらず 東レなど開発
東レと星薬科大学は糖尿病治療に使うインスリン製剤を注射ではない手法で投与する技術を開発した。点鼻薬のように鼻に噴霧する。投与したインスリンの半 分以上が血液中に浸透することを動物実験で確認した。今後、製薬企業と組み、人での臨床試験入りを目指す。糖尿病患者の自己注射の負担を軽減できる技術と して注目されそうだ。 複数のアミノ酸がつながったペプチド(たんぱく質の断片)をインスリンと混ぜて液体状にして、鼻の粘膜に噴霧する。このペプチドは細胞をすり抜ける性質があり、インスリンが血液中に届きやすくなる。
問題点
上記はオンライン版なので一部割愛されているのだが、吸入インスリンの問題点には大きな問題があった。吸入インスリンの吸入効率は10%程度しかないのだ。十分効果を発揮するためには10倍の量を吸入する必要がありコストが嵩んだ。また、注射薬のように持効型や超速効型といった修飾された製剤がなく、レギュラーインスリンのみだっため投与の手間が大きかった点もあげられる。
今後に期待したい
今回報じられている「鼻に噴霧するインスリン」は吸収効率が50%にまで高められているようで、大きな進歩といえる。注射薬と異なり「痛くない」というのが最大の売りだが、吸入インスリンの轍を踏まないためには吸入効率のさらなる改善、持効型や超速効型もリリースして注射薬に劣らぬラインナップをそろえる必要があるだろう。最近では経鼻インスリンが初期のアルツハイマー病に対して効果があるとの報告があり、P2-P3まで臨床研究が進んでいる。アルツハイマー病をインスリンが改善させる機序はよくわかっていないが、経鼻インスリンが大脳の近傍で脳に直接作用することに意味があるようだ。逆に言えば、全身投与ではなく、血糖が下がってしまわないから良いということなのだろう。糖尿病治療のためにインスリンを使うということからは別の方向に話が進んでしまっているのが残念だ。
2019/02/16 ノボノルディスクファーマが開発していた経口インスリンi338は開発を断念した模様である。