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α-グルコシダーゼ阻害薬による心血管イベント抑制は腸管での水素ガス増加によるものか?

28/09/2009

α-グルコシダーゼ阻害薬による心血管イベント抑制は腸管での水素ガス増加

アカルボース

アカルボース

アカルボース(商品名:グルコバイ)には心血管イベント抑制作用があるが、この作用は有名な副作用である腸管ガスに含まれる水素ガスによってもたらされているのではないかという新たな仮説が提唱されている。

α-グルコシダーゼ阻害薬による心血管イベント抑制は腸管での水素ガス増加によるものか?

Suzuki Y, Sano M, et al:FEBS Lett 583: 2157-2159,2009

日本医科大学の鈴木良彦、慶応義塾大学の佐野元昭らは、腸内細菌が産生する水素ガスこそが、アカルボースによる心血管イベント抑制効果の鍵を握る分子であると考えた。つまり、アカルボース内服によって腸内に発生した水素ガスが抗酸化作用を発揮して心血管イベントを抑制しているという新仮説である。実際に、11例の健常人にアカルボース300mg/日を自由摂取下で投与して4日後に呼気中の水素ガスとメタンガス濃度を測定した。その結果、アカルボースの内服によって呼気中の水素ガスは有意な上昇を示したが(p<0.05)、メタンガス産生には差がみられなかった。この新仮説は、水素ガスには抗酸化作用があり、不燃レベルの水素ガスの吸入によってラットの脳や心臓の虚血再灌流障害を抑制すること1)2)、動脈硬化モデルであるapoEノックアウトマウスに飽和水素水を半年間与えると動脈硬化の進展が抑制されるなどの基礎研究結果によって裏づけられている3)。また、腸管細菌から産生される水素ガスが抗炎症作用を発揮して臓器保護的に作用しているという報告もこの仮説を支持している4)。

鈴木らは「腸管内水素ガス発生というアカルボースの新しい効果を患者さんたちが実感し、服用コンプライアンスの向上につながることを期待している」とコメントしている。

1)Ohsawa I, et al: Nat Med 13: 688-694,2007
2)Hayashida K, et al: Biochem Biopyhs Res Commun 373: 30-35,2008
3)Ohsawa I, et al: Biochem Biophys Res Commun 377: 1195-1198,2008
4)Kajiyama S, et al: Natr Res 28:137-143,2008

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