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トラゼンタとジャディアンスの併用療法は血糖・体重ともにリバウンドしない素晴らしい治療法だ

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トラゼンタとジャディアンスの併用療法は血糖・体重ともにリバウンドしない素晴らしい治療法だ

トラゼンタ ジャディアンス 併用療法

トラゼンタとジャディアンスの併用療法は血糖・体重ともにリバウンドしない素晴らしい治療法だ

Combination of Empagliflozin and Linagliptin as Second-Line Therapy in Subjects With Type 2 Diabetes Inadequately Controlled on Metformin
Diabetes Care 2015;38:384-393

Diabetes Care 3月号に掲載されたリナグリプチン・エンパグリフロジン併用の論文。メトホルミンでコントロール不十分例にエンパグリフロジン(25mg/10mg)をリナグリプチン5mgに併用した場合、エンパグリフロジン(25/10mg)の単独やリナグリプチンの単独追加よりもHbA1c改善作用が高く、安全性も確認された。エンパグリフロジン25mgの単独追加が、10mgの単独追加に対して優れているのかと思ったがそうでもなかったのが意外だった。SGLT2阻害薬は one dose のものと増量可能なものに分かれるが、今回のメトホルミンへの上乗せを見る限りエンパグリフロジンは10mgで良いのでは、と思わざるを得なかった。また、リナグリプチン単独追加が結構効果が高いことを再認識した。

DPP-4阻害薬の製品紹介では、52週フォローの場合1年未満にHbA1cが徐々に悪化するとか1年くらいで体重がリバウンド傾向というのもみてきた。しかし、今回の論文のFigの目玉は両剤併用群がHbA1cも体重もリバウンドしないというその図だろう。

エンパグリフロジンとリナグリプチンの併用療法

エンパグリフロジンとリナグリプチンの併用療法

DPP-4阻害薬 リナグリプチン(トラゼンタ)、SGLT2阻害薬 エンパグリフロジン(ジャディアンス)ともにベーリンガーインゲルハイムの薬剤である。今後、恐らく合剤を出してくるだろう。かなり効果の高い合剤になることが期待できる。船橋の糖尿病患者さんに使用できる日も遠くない。楽しみにしている。日本での合剤名は(ミカムロを参考に)「トラディアンス」というのはどうだろう。
もっとも、米国市場では既にGlyxambi®という商品名でFDAの承認を得ている。日本市場では、アステラスのスーグラとMSDのシタグリプチンの合剤がリリースされそうだ。船橋の糖尿病患者さんに有効なのは言うまでもない。船橋市のみならず、習志野市、鎌ヶ谷市、八千代市、市川市などの糖尿病患者さんにも朗報だ。

目的
メトホルミンで血糖コントロール不十分の患者に対するエンパグリフロジン・リナグリプチン併用療法の効果と安全性を検討する。

方法
メトホルミンを52週投与した患者に以下の各々の薬剤をアドオンした。エンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mg群 (n=137)、エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg群 (n=136)、エンパグリフロジン25mg群 (n=141)、エンパグリフロジン10mg群(n=140)、リナグリプチン5mg群 (n=132)に分けた。プライマーエンドポイントはアドオン24週後のベースラインからのHbA1c改善とする。

結果
アドオン前のベースラインは HbA1c 7.90-8.02% [62.8-64.1 mmol/mol]
アドオン24週後のHbA1c低下は、エンパグリフロジン・リナグリプチン併用群がエンパグリフロジン、リナグリプチンの単独追加群よりも各々優れていた。 *adjusted mean (SE)

ベースラインからのHbA1c低下は以下。
エンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mg群 -1.19% (0.06) -13.1mmol/l [0.7]
エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mg群 -1.08% (0.06) -11.8mmol/l
エンパグリフロジン25mg群 -0.62% (0.06) -6.8mmol/l
エンパグリフロジン10mg群 -0.66% (0.06) -7.2mmol/l
リナグリプチン5mg群 -0.70% (0.06) -7.6mmol/l

アドオン前にHbA1c7%超だったものが24週後にHbA1c7%未満に改善した割合は各々61.8%,57.8%,32.6%,28.0%,36.1%であった。52週間後も有効性は保たれている。

結論
エンパグリフロジン・リナグリプチンのセカンドラインとしての併用療法を52週にわたり行なったが、各々を単剤で併用するよりもHbA1c低下作用が強かった。安全性も保たれた。

本文
メトホルミンは2型糖尿病治療の第一選択薬として推奨されているが、血糖コントロールを改善するためにはさらなる上乗せを求められる場合がほとんどである。強力な治療を継続することは、一定期間強力な治療を維持した場合に(その治療期間を超えて、後になっても)得られる遺産効果をもたらす可能性がある。それゆえ、メトホルミンで効果不十分な場合にはこれらの2種の経口薬を上乗せすることが効果的であろう。

近位尿細管に存在するSGLT2を阻害すると、ブドウ糖の再吸収が抑制され、尿からのブドウ糖排泄が促進される。その結果、2型糖尿病患者の高血糖が改善するわけである。この作用はインスリン非依存性に起こるため、SGLT2阻害薬は低血糖のリスクが少ない。また、体重減少や血圧低下のベネフィットもある。エンパグリフロジンはSGLT2選択性が高く効果が高いSGLT2阻害薬である。2型糖尿病患者を対象とした第三相試験において、エンパグリフロジン10mg,25mgを24週間にわたりメトホルミンにアドオンした場合の認容性が認められている。低血糖リスクは低く、プラセボ群に比べてHbA1c低下作用、空腹時血糖低下作用、体重減少作用、血圧低下作用が認められている。

DPP-4阻害薬はGLP-1などのインクレチンの分解を阻害することでインスリン分泌を促進し、グルカン分泌を抑制して2型糖尿病患者の血糖を改善する。DPP-4阻害薬はグルコース依存性にインスリン分泌を促進するため、低血糖リスクは低い。リナグリプチンは選択性が高く効果が高いDPP-4阻害薬である。2型糖尿病患者を対象にした第三相試験においてリナグリプチン5mgを24週間にわたりメトホルミンにアドオンしたところ、認容性・低い低血糖リスクだけでなく、体重増を伴わない血糖改善をもたらすことが認められている。

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の相補的作用を考慮すれば、メトホルミンにエンパグリフロジンとリナグリプチンの両者をアドオンするやり方(3剤併用療法)はメトホルミンにエンパグリフロジン、リナグリプチンの片方づつをアドオンするやり方(2剤併用療法)よりも特別に治療上のベネフィットが大きくなる可能性がある。本研究はメトホルミン単独療法を受けている2型糖尿病患者さんにエンパグリフロジン・リナグリプチンの両者の1日1回内服を追加した際の効果と安全性を検討した。

研究のデザイン・方法
Study Design

本研究は2011年8月から2013年9月までの間、22ヶ国197施設で行われたランダム化・二重盲検・並行群間比較試験 (Phase 3) である。ヘルシンキ宣言に基づき、倫理的な配慮のもとに科学的で適正に実施された。

選択基準・除外基準

18歳以上、BMI 45以下、HbA1c 7-10.5% の2型糖尿病患者でメトホルミンを1,500mg/日以上最大耐用量まで、用量変更なしに12週間以上内服していて、食事・運動療法を継続している患者を優先してランダマイズした。除外基準は血糖コントロール不良(空腹時血糖が240mg/dl超が2回以上);メトホルミン以外の糖尿病約治療をランダム化の12週間以内に受けている;腎障害用の食事療法をしてもeGFRが60mL/min未満の患者;同意取得前3ヶ月以内にACS,脳梗塞,TIAを起こしている患者;2年以内にBariatric Surgeryを受けている患者;同意取得1ヶ月以内に他の治験薬を内服している患者;同意取得3ヶ月以内に抗肥満薬を内服した患者。

Treatment and Interventions

(一部省略)52週フォローする。

End Points and Assessments

プライマーエンドポイントはアドオン24週後のベースラインからのHbA1c改善とする。
セカンダリーエンドポイントは24週後の空腹時血糖のベースラインからの改善、24週後の体重増のベースラインからの変化、24週後のHbA1c7%以上と7%未満の患者の分布。その他、血圧等(後略)。

結果
686患者がランダム化。(Table1)
24週後のHbA1cベースラインはエンパグリフロジン・リナグリプチン追加群で各々の単剤追加文より有意に低かった(Fig.1A)。 開始時にHbA1c 8.5%以上だった場合、エンパグリフロジン・リナグリプチン併用はエンパグリフロジン25mg,リナグリプチン5mgと比較して有意に下げ幅が大きかった。しかしエンパグリフロジン10mgに比べれば大きくなかった (Fig.1B)。ベースラインHbA1c7%以上の患者ではエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群のHbA1c7%未満達成率が有意に高かった(Fig.1C)。24週後のFPG低下度合いはエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群が単独追加群より大きかった (Fig.1D)。24週後の体重減少度合いはエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群が各々の単独追加群より有意に大きかったが、エンパグリフロジン10mg/25mgよりは大きくなかった(Fig.1E)。

52週後にもエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群では下がったHbA1cを維持できていた(Fig.2A)。開始前にHbA1c7%超で52週後に7%未満だった割合は各々の単独追加群よりエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群で多かった(Fig.2B)。52週後にはエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群はリナグリプチン5mg群に比べ空腹時血糖を有意に下げた (Sup.Table2)。空腹時血糖はエンパグリフロジン25mg/リナグリプチン5mgでエンパグリフロジン25mgより有意に下げたが、エンパグリフロジン10mg/リナグリプチン5mgエンパグリフロジン10mgの間では差は出なかった(Sup.Table2)。

52週後のエンパグリフロジン・リナグリプチン併用群のベースラインからの体重減少はリナグリプチン単独追加より有意に大きかったが、エンパグリフロジン10mg/25mgの各々の体重減少とは有意差が出なかった(Fig.2C)。

52週後のベースラインからの収縮期血圧低下はリナグリプチン単独追加より有意に大きかったが、エンパグリフロジン10mg/25mgの各々とは有意差が出なかった(Fig.3A)。エンパグリフロジン・リナグリプチン併用群は52週後の拡張期血圧を下げた。リナグリプチン5mgとの有意差はギリギリ(p=0.05)、エンパグリフロジン10mg/25mgの各々のとは有意差が出なかった(Fig.3B)。エンパグリフロジン・リナグリプチン併用群とエンパグリフロジン10mg/25mgの血圧低下は脈拍増加と関係がなかった。

安全性
どの群でも副作用は似たような頻度だった。死亡例はエンパグリフロジン10/リナグリプチン5群で1名(高血圧性心不全)、エンパグリフロジン10mgで1名(肺癌)。低血糖で継続できなかった者はいなかった。エンパグリフロジン25mgの患者が1名、高血糖のために継続できず、エンパグリフロジン10/リナグリプチン5の患者が1名、やる気不足で継続できなかった。低血糖はエンパグリフロジン25/リナグリプチン5で3.6%,エンパグリフロジン10/リナグリプチン5で2.2%,エンパグリフロジン25mgで3.3%,エンパグリフロジン10mgで1.4%,リナグリプチン5mgで2.3%であった。尿路感染症はエンパグリフロジン25/リナグリプチン5で10.2%,エンパグリフロジン10/リナグリプチン5で9.6%,エンパグリフロジン25mgで13.5%,エンパグリフロジン10mgで11.4%,リナグリプチン5mgで15.2%であった。全群で女性の方が男性より多かった。重症度は軽度?中程度に収まった。エンパグリフロジン10mgの患者が1名尿路感染症で敗血症になり入院、抗生剤投与で回復した。エンパグリフロジン25mgの患者の1名で腎盂腎炎の増悪をみたが、試験薬中止にはならなかった。性器感染症はエンパグリフロジン25/リナグリプチン5で2.2%,エンパグリフロジン10/リナグリプチン5で5.9%,エンパグリフロジン25mgで8.5%,エンパグリフロジン10mgで7.9%,リナグリプチン5mgで2.3%。性器感染症はエンパグリフロジン10/リナグリプチン5,エンパグリフロジン25mg,エンパグリフロジン10mgで女性優位だったが、エンパグリフロジン25/リナグリプチン5,リナグリプチン5mgではそうではなかった(Table2)。エンパグリフロジンの2名の患者が性器感染症と矛盾しない合併症を起こし、試験薬中止に追い込まれた。約11ヶ月経ったところで、リナグリプチン5mgの患者で「慢性膵炎」がみられた。この治験責任医師はこれを治験薬と関連付けず、減薬も休薬も指示しなかった。過敏症は、エンパグリフロジン25/リナグリプチン5で血管浮腫1名、エンパグリフロジン10/リナグリプチン5で蕁麻疹1名、リナグリプチン5mgで血管浮腫1名であった。心不全が悪化した患者はおらず、心不全で入院になった者もいなかった。

結論
エンパグリフロジン・リナグリプチン両者のメトホルミンへの追加は(予想通り)効果がある。2型糖尿病の自然歴を考慮すれば、単剤で始まった薬物治療から併用療法へ移行するのが多い(ことも当然だろう)。今回の、メトホルミンにエンパグリフロジン・リナグリプチン両者を追加する試験はHbA1c, FPG, 体重,血圧を下げ、52週後まで維持した。
エンパグリフロジン単独追加でみられる体重減少、血圧低下はリナグリプチンとの併用になると維持される(リバウンドしにくくなるということ)。
エンパグリフロジンはeGFRを下げると言われているが、リナグリプチンも併用すると下げが僅かになる。エンパグリフロジンもリナグリプチンも各々単独では尿中アルブミンを減らすと言われているが、恐らく、リナグリプチンによる糸球体の構造変化、もしくはエンパグリフロジンのフィードバック・メカニズムによる尿細管の機能的・血流力学的な変化によるものであろう。面白いことに、今回のスタディでエンパグリフロジン・リナグリプチン併用で微量アルブミン尿がなくなった患者がいる。
メトホルミンにエンパグリフロジン・リナグリプチンを追加して3剤併用になったにもかかわらず低血糖は増えなかった。
メトホルミンにエンパグリフロジン・リナグリプチンを追加することで、低血糖リスクを増すことなく、各々を単独追加するよりもより優れた血糖降下作用が得られた。両剤併用の認容性は高く、安全性も単独で各々追加した場合と同様だった。これらの結果から、メトホルミン単独療法でコントロール不十分な患者に速やかにこの2剤を追加して3剤併用にすることは、伝統的な「ねじれた」治療のアプローチを上回る利点を与えてくれるだろう。

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