富士フィルムファーマのインスリングラルギンバイオシミラー「FFP」、2016年7月15日に発売。
富士フィルムファーマが解散する
2018/07/27 富士フイルムホールディングス(HD)は27日、後発薬事業を手掛けるグループ会社の富士フイルムファーマ(東京・港)を解散すると発表しました。薬価引き下げなどで競争環境が厳しく、収益の確保は難しいと判断した模様です。解散で医薬品事業を絞り込み、がんや中枢神経疾患の新規診断薬・治療薬など成長分野に経営資源を集中する方針です。
富士フィルムファーマのインスリングラルギンバイオシミラー
2016年3月28日、インスリン製剤のバイオシミラーである「インスリン グラルギンBS注キット「FFP」」、「インスリン グラルギンBS注100単位/mL「FFP」の製造販売承認を取得しました。適応症は、「インスリン療法が適応となる糖尿病」です。インスリン グラルギン (遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続2]とされるものです。「インスリン グラルギンBS注キット「FFP」」は、薬液と注入器がセットになったキット製剤で、「インスリン グラルギンBS注100単位/mL「FFP」」は、薬液のみのバイアル製剤です。ディスポーザブルペンはアメリカのデバイスメーカーとの共同開発、OEM。ナノパスニードル、マイクロファインプラスなどの既存の針が使用できます。
生食入の製剤見本を触りましたが、感触は良かったです。回した感じは軽く、80単位まで回ります。正回転、逆回転時の目盛り音もしっかり出て、視力の低下した患者さんでも音で単位合わせはし易いでしょう。ソロスターより少し太いかな、くらいの太さです。単位目盛りに書かれている0より大きい数は偶数の数字だけ(つまり、0,2,4...)ですが、1単位目には半分くらいの大きさの時で1と書かれています。写真ではわかりにくいですが、水色の脇腹部分にはエンボス加工というのか、間違っているかもしれませんが、凹凸がついています。FFPと手触りで判別できるようになっています。既存のインスリンメーカーではなく、デバイスがどんなものだか不安がありましたが、よく研究されています。予想以上の出来栄えです。これなら安心して処方できそうです。薬価は1キット1,528円と、ライバル品の薬価(2016年4月のランタス注ソロスター2,069円/インスリングラルギンBS「リリー」ミリオペン1,612円)より安く設定されています。
水色を基調としたカラーリング。注入液部分には目盛りあり。
側面には凹凸があり、手触りでFFPと判別できる。
注入ボタンは押しやすい。インジケータの色は黄色、1単位目に「1」と刻印。
マイクロファインプラスをつけたところ。
日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが共同販促するLY2963016,「インスリングラルギンBS注ミリオペン®『リリー』、「インスリングラルギンBS注カート『リリー』 (インスリン グラルギン (遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続1]) は2015年8月に発売されている。富士フィルムファーマのグラルギンバイオシミラーFFP-112については、2型糖尿病患者を対象としたLY2189265の第Ⅲ相試験(単独療法)が行われていました。発売は2016年7月15日、製品はインドの製薬企業から輸入、デバイスは米国メーカーと共同開発したペンを採用という情報あり。最初から長期処方可能、薬価は1キット1,528円。
2015/07/25
バイオシミラーで富士フイルム・協和発酵キリンがアストラゼネカと提携することが決まりました。
現時点ではグラルギンのバイオシミラーに関しての情報はありませんが、組み合わせからして有力な糖尿病アライアンスたる顔ぶれです。アストラゼネカという糖尿病に力を入れている会社と組むことになりました。アストラゼネカと協和発酵キリンはオングリザ(サキサグリプチン)の販売で関係があります。今後はアストラゼネカが富士フィルムのグラルギンバイオシミラーを売る可能性もあるでしょう。
強化インスリン療法実施中の1型糖尿病患者を対象としたFFP-112の国内治験が終わりました。
「強化インスリン療法実施中の1型糖尿病患者を対象としたインスリングラルギンBS注の第Ⅲ相臨床試験」加来先生ら、薬理と治療, vol44, no.1 別冊 に具体的な情報が出ています。富士フィルムファーマのWeb上の情報は少ないですが、製造販売承認済み、7月15日発売です。
富士フィルムに加え、Merck(MSD)も サムスン(Samsung Bioepis)と組んでMK-1293というグラルギンのバイオシミラーを開発中のようでありますが、これもほとんど情報がないのです。マイラン/Biocon(インド)・メルク(MSD)/のアライアンスもグラルギンのバイオシミラーを計画しているようです。
現在、世界でトップシェアであるインスリン、Glargine.これはLANTUS(ランタス)という名前で知られています。日本国内市場においてはノボノルディスクが圧倒的に強かったのですが、風穴を開けたインスリンとしても知られています。ノボノルディスクはランタス、とりわけランタス注ソロスターが出てから本気で対応を迫られました。
従来のオプチクリックで低迷していた状態を脱したランタスは、BOTという新しい治療の流れを生み、外来でのインスリン導入を簡単に行えるようにして基礎インスリンに革命的を起こしたとも言える、エポックメイキングな薬剤だったのです。
時は流れ、ついにグラルギンの特許が切れました。
今こそ、グラルギンのバイオシミラーの時代です。インスリン療法による高負担に喘ぐ患者さんの救世主足りうる薬剤、それがグラルギンのバイオシミラーなのです。
1型,2型およびその他の糖尿病患者さんが待望しているのは間違いないでしょう。インスリングラルギン・バイオシミラーの登場が糖尿病治療に新しい地平を開くことになるいでしょう。
糖尿病安全保障のためのグラルギンバイオシミラー
バイオシミラーとはいえ、日本の会社がインスリンを初めて自社生産することになります。これまでは全てのインスリンが輸入品でした。エネルギー安全保障という言葉がありますが、「糖尿病安全保障」のためにも歓迎すべきことではないでしょうか。東シナ海、南シナ海で有事があった際には輸入品のインスリンが国内に入らなくなるかも知れません。石油を絶たれたら日本経済がもたないのと同様、外国からインスリンが入らなくなれば1型糖尿病患者、インスリン依存の2型糖尿病患者ももちません。日本にはこれだけの製薬企業がありながら、国産品がありませんでした。
インスリンは恐らく空輸なので、欧州や米国からの輸入は極東有事でも問題はないでしょう。しかし、リスクは戦争だけではありません。少子高齢化、ゼロ成長、非常に多い国債発行額。円が極端に安くなる局面が訪れればデンマーク・クローネ建て、米ドル建て、ユーロ建てのインスリン価格は高騰します。今後の為替相場いかんではインスリンが高嶺の花、ということだってあり得るのです。そのためには、今回のグラルギンバイオシミラーを手始めとして、超速効型インスリンアナログの国内自給が求められます。自社開発できれば最高ですが、そうでなくても超速効型インスリンアナログのバイオシミラーを生産すれば良いのです。リスプロは既に特許切れでありサノフィが報復措置としてリスプロのバイオシミラーを生産する動きがあります。富士フィルムもグラルギンに続いてリスプロのバイオシミラー生産に乗り出し、日本人が国産のインスリンを使えるようにして欲しいものです。