メタボリックシンドローム基準、女性腹囲80cmに厳格化へ
さまざまな合併症を引き起こすメタボリックシンドローム。「メタボ検診」のよって、この言葉を知らない人はほとんどいなくなったといってよいだろう。
メタボリックシンドロームは、腹囲の大きさで表わされる内臓肥満をベース(必須)に、耐糖能異常(糖尿病だけでなくその前段階の境界型も含む)、高トリグリセライド(中性脂肪)血症、高血圧症の3つのうち2つが合併した状態を言う。腹周りが大きいことが大前提になっているわけである。
わが国の診断基準のうち、女性の腹囲基準が国際標準に沿ってこの度改められることになった。 わが国のメタボリックシンドロームの基準は近いうちに改正され、その際は女性の腹囲の基準が国際基準に合わせて男性の腹囲よりも厳しくなるだろうと言われていた。これはわが国における腹囲径の測定部位が国際的な部位とずれているためと思われる。世界的に見るとメタボリックシンドロームの基準は、2005年にわが国で定められたもの以外に3つが存在した。
WHO(1998)では、ウエスト/ヒップ比が基準のひとつであった。腹囲と同様に内臓肥満の指標。男性0.9 女性 0.85
NCEP ATP III(2005)では腹囲が基準のひとつであった。男性≧102cm 女性≧88cm IDF(2005)では腹囲の基準が人種別に定められていたが、アジア人向けの基準は以下。
男性≧90cm 女性≧80cm 。そして最近、IDF,AHA,NHLBI,世界心臓連合,国際動脈硬化学会,国際肥満学会がメタボリックシンドロームの統一診断基準を発表した(Circulation 2009; 120: 1640-1645,Lancet 2010; 375: 181-183)。この基準で腹囲は必須項目から外されている。これにより、今後は世界的にメタボリックシンドロームの診断においては腹囲は今までのように重視されなくなるだろう。同時に新基準では、日本の独特の腹囲の基準を受けてか日本人の腹囲の基準は日本独自基準AとIDF準拠のアジア人としての日本人の腹囲基準のBの2つに分裂してしまっている。このように、今までのわが国のメタボリックシンドローム診断基準は腹囲偏重であるうえ、女性腹囲≧男性腹囲となっており国際的に孤立した基準になりつつある。今回の研究結果によってIDFのアジア人向けの基準に近い、男性≧85cm 女性≧80cmとなることで国際的な流れに沿ったものになる。今までの基準では、女性の腹囲の基準が緩かったために、特に女性の高リスク患者を拾い上げる効率が悪かったと考えられる。また、国際的にメタボリックシンドローム≠腹囲ではなりつつある。糖尿病以前の耐糖能異常や高血圧症、脂質異常症もしっかり拾い上げねばならない。船橋市糖尿病患者さんの健康寿命を伸ばすべく、我々は進化していく診断基準に準拠してさらに頑張っていかねばならない。