低血糖は、1型糖尿病のインスリン療法において最も頻度の高い副作用です。適切な知識と対策により、リスクを最小化することができます。
低血糖の定義
- 血糖値 70 mg/dL 未満:低血糖(Level 1)
- 血糖値 54 mg/dL 未満:重篤な低血糖(Level 2)
- 意識障害・援助を要する低血糖:Level 3
低血糖の症状
自律神経症状(警告症状)
血糖値が低下すると、交感神経が活性化し、以下の症状が現れます。
- 冷汗
- 動悸・頻脈
- 手指振戦(手が震える)
- 不安感・焦燥感
- 空腹感
- 顔面蒼白
中枢神経症状(神経糖欠乏症状)
血糖値がさらに低下すると、脳へのグルコース供給が不足し、以下の症状が現れます。
- 集中力低下
- 頭痛
- 視力障害(かすみ目)
- 言語障害
- 行動異常
- 意識障害(傾眠〜昏迷〜昏睡)
- 痙攣
低血糖の原因
- インスリン用量の過剰:食事量に対してインスリン用量が多い。
- 食事の遅延・欠食:インスリンを注射した後に食事を摂らない。
- 運動:運動によりインスリン感受性が亢進し、血糖値が低下。
- アルコール摂取:アルコールは肝臓の糖新生を抑制し、低血糖リスクを増加。
- 腎機能低下:インスリンの排泄が遅延し、作用時間が延長。
低血糖時の対応
意識がある場合
- 血糖値を測定(70 mg/dL 未満を確認)
- ブドウ糖 15〜20gを摂取(ブドウ糖タブレット3〜4錠、またはジュース150〜200mL)
- 15分後に血糖値を再測定
- 70 mg/dL 未満の場合は、ブドウ糖を繰り返す
- 70 mg/dL 以上になったら、次の食事まで炭水化物を含む間食を摂る
意識がない場合
経口での糖分投与は誤嚥のリスクがあり危険です。
- グルカゴン注射を筋肉内に投与(家族・周囲の人が実施)
- 救急車を呼ぶ(119番)
- 横向きに寝かせ、気道を確保する
グルカゴンキット
グルカゴンは、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させるホルモンです。1型糖尿病患者には、グルカゴンキットを常備し、家族や周囲の人に使用方法を教育することが重要です。
- 投与量:成人 1mg(筋肉内注射)
- 効果発現:10〜15分
- 副作用:吐き気・嘔吐(一時的)
低血糖の予防策
- 適切なインスリン用量調整:カーボカウントにより、食事量に応じたインスリン用量を計算。
- 頻回な血糖測定:CGMの活用により、低血糖を早期に検出。
- 運動前の対策:運動と1型糖尿病のページをご参照。
- アルコール摂取時の注意:食事を伴わずにアルコールを摂取しない。
- 低血糖無自覚症の管理:低血糖を繰り返す場合は、血糖目標値を見直し、数週間厳格な低血糖回避を行う。
低血糖無自覚症(Hypoglycemia Unawareness)
低血糖を繰り返すと、警告症状(自律神経症状)が現れなくなり、気づかないうちに重篤な低血糖を起こすリスクが高まります。これを低血糖無自覚症と呼びます。
低血糖無自覚症が疑われる場合は、以下の対応が必要です。
- 血糖目標値を引き上げる(一時的にHbA1c 7.5〜8.0%を目標)
- 数週間厳格な低血糖回避を行う
- CGMの導入を検討
- インスリンポンプ療法への切り替えを検討
よくある質問
低血糖とはどのくらいの血糖値ですか?
血糖値70 mg/dL未満を低血糖と定義します。血糖値54 mg/dL未満は重篤な低血糖で、意識障害や痙攣を起こすリスクがあります。
低血糖の症状は何ですか?
自律神経症状(冷汗、動悸、手指振戦、不安感)と、中枢神経症状(集中力低下、頭痛、視力障害、意識障害)があります。症状は個人差があります。
低血糖になったらどうすればいいですか?
血糖値が70mg/dL未満の場合は、ブドウ糖15〜20g(ブドウ糖タブレット3〜4錠、またはジュース150〜200mL)を摂取し、15分後に再測定します。改善しない場合は繰り返します。
意識がない人に何か食べさせてもいいですか?
いいえ。意識がない人に経口で糖分を与えるのは誤嚥のリスクがあり危険です。グルカゴン注射を筋肉内に投与し、救急車を呼んでください。
低血糖を繰り返すとどうなりますか?
低血糖を繰り返すと、低血糖無自覚症(Hypoglycemia Unawareness)になり、警告症状なく重篤な低血糖を起こすリスクが高まります。血糖目標値の見直しが必要です。
関連ページ
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