1型糖尿病の診断は、血糖値の測定とインスリン産生能の評価、そして自己抗体の検出を組み合わせて行われます。2型糖尿病との鑑別が特に重要です。
診断基準
日本糖尿病学会の診断基準に基づき、以下の項目が評価されます。
血糖基準
- 空腹時血糖値:126 mg/dL以上
- 随時血糖値:200 mg/dL以上
- HbA1c(NGSP値):6.5%以上
- 75g OGTT 2時間値:200 mg/dL以上
これらのいずれかを満たし、かつインスリン産生能の低下が確認された場合、1型糖尿病と診断されます。
1型糖尿病に特有の検査
自己抗体検査
1型糖尿病(特に1A型)では、以下の自己抗体が検出されます。
| 抗体名 | 略称 | 陽性率 |
|---|---|---|
| 抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体 | 抗GAD抗体 | 60〜90% |
| 抗インスリン抗体 | IAA | 小児で高率 |
| 抗IA-2抗体 | IA-2A | 50〜70% |
| 抗ZnT8抗体 | ZnT8A | 60〜80% |
複数の抗体が陽性の場合、1型糖尿病の診断的価値が高まります。
Cペプチド検査
Cペプチドは、インスリンが産生される際に等分子で分泌される物質です。インスリン製剤の影響を受けずに内因性インスリン産生能を評価できます。
- 空腹時Cペプチド:0.3 ng/mL未満でインスリン産生能の低下を示唆
- 尿中Cペプチド排泄量:10 μg/日未満で高度なインスリン産生能低下
- グルカゴン負荷試験:刺激後Cペプチド上昇が乏しい場合、β細胞機能の低下を確認
劇症1型糖尿病の診断
劇症1型糖尿病は日本に多い亜型で、以下の3つの基準で診断されます。
- ケトアシドーシスまたはケトーシスを伴う
- 初診時血糖値288 mg/dL以上、かつHbA1c(NGSP)8.7%未満
- 尿中Cペプチド排泄量10 μg/日未満、または空腹時血清Cペプチド値0.3 ng/mL未満
発症が極めて急激で、前駆症状(感冒様症状)を伴うことがあります。酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の上昇を伴う場合もあります。
緩徐進行型1型糖尿病(LADA/SPIDDM)の診断
緩徐進行型1型糖尿病は、初期には2型糖尿病と似た経過をたどります。以下の点が診断の手がかりになります。
- 抗GAD抗体陽性
- 経口血糖降下薬の効果が徐々に低下する
- Cペプチド値が徐々に低下する
- 発症年齢が比較的高い(30歳以上)
- 肥満を伴わない
鑑別診断
1型糖尿病と鑑別が必要な疾患には以下があります。
- 2型糖尿病:インスリン抵抗性が主体。肥満を伴うことが多い。
- MODY(若年発症成人型糖尿病):単一遺伝子異常による糖尿病。家族歴が重要。
- 続発性糖尿病:膵疾患(慢性膵炎、膵切除後)、内分泌疾患(クッシング症候群、先端巨大症)、薬剤性(ステロイドなど)
診断後の対応
1型糖尿病と診断された場合、直ちにインスリン療法が開始されます。また、以下の評価も併せて行われます。
- 合併症の評価(眼底検査、尿アルブミン、神経伝導検査など)
- 甲状腺機能検査(1型糖尿病では自己免疫性甲状腺疾患の合併率が高い)
- セリアック病スクリーニング(欧米で推奨、日本では稀)
診断後の治療については、以下のページをご確認ください。
- インスリン療法(基礎):複数回注射法(MDI)の基本
- インスリンポンプ療法:CSII(持続皮下インスリン注入)
- CGM:持続血糖モニタリング
よくある質問
1型糖尿病の診断基準は何ですか?
1型糖尿病の診断には、空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上などの血糖基準を満たすことに加え、自己抗体の陽性やCペプチド低値などインスリン産生能の低下が確認されます。
抗GAD抗体とは何ですか?
抗GAD抗体(グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体)は、1型糖尿病で最も高頻度に検出される自己抗体です。陽性の場合、自己免疫機序によるβ細胞破壊が強く示唆されます。
Cペプチド検査は何を調べますか?
Cペプチドはインスリンが産生される際に等分子で分泌される物質です。Cペプチド値を測定することで、膵臓のβ細胞がどの程度インスリンを産生しているかを評価できます。1型糖尿病ではCペプチド値が低値または検出限界以下になります。
劇症1型糖尿病の診断はどう行いますか?
劇症1型糖尿病は、①ケトアシドーシスまたはケトーシスを伴う、②初診時血糖値288mg/dL以上かつHbA1c 8.7%未満(NGSP値)、③尿中Cペプチド排泄量または空腹時血清Cペプチド値が低値、の3つの基準で診断されます。
1型糖尿病の診断に遺伝子検査は必要ですか?
通常、1型糖尿病の診断に遺伝子検査は必須ではありません。ただし、MODY(若年発症成人型糖尿病)など単一遺伝子異常による糖尿病が疑われる場合は、遺伝子検査が考慮されます。
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