1型糖尿病の診断基準とは?GAD抗体・Cペプチド・劇症型の判定

1型糖尿病の診断は、糖尿病であることを確認する段階と、どのタイプの糖尿病かを判定する段階の2段階で進みます。血糖値とHbA1cに加えて、膵島関連自己抗体とCペプチド値、発症からの経過を組み合わせて判断します。

1型糖尿病の診断の流れ

1型糖尿病かどうかは、次のような流れで検討されます。

  1. 糖尿病かどうかを確認する:血糖値とHbA1cを測定し、糖尿病の診断基準を満たすかどうかを確認します。
  2. 成因と発症の様式を判定する:膵島関連自己抗体やCペプチド値、症状の出方や発症からの経過から、糖尿病のタイプを判定します。
  3. インスリン療法の必要性を評価する:内因性インスリン分泌がどの程度保たれているかを確認し、治療方針を決めます。

1型糖尿病は、成因からは自己免疫性と特発性に、発症の様式からは急性発症・緩徐進行・劇症に分類されます。同じ1型糖尿病でも、発症の仕方によって診断のポイントは異なります。

糖尿病の診断基準

まず、糖尿病そのものがあるかどうかを確認します。日本糖尿病学会の基準では、次のいずれかを満たす場合を「糖尿病型」と判定します。

検査 糖尿病型の基準
空腹時血糖値 126 mg/dL以上
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値 200 mg/dL以上
随時血糖値 200 mg/dL以上
HbA1c(NGSP値) 6.5%以上

判定には次のような決まりがあります。

  • 血糖値とHbA1cを同じ日の同じ採血で測定し、両方が糖尿病型であれば、その1回の検査で糖尿病と診断されます。
  • 血糖値かHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型の場合は、原則として別の日に再検査を行います。
  • HbA1cだけでは糖尿病と診断できません。確定診断には血糖値の測定が欠かせません。
  • 家庭用の血糖測定器やCGM、尿糖の結果は参考にはなりますが、それだけで糖尿病を確定することはできません。

HbA1cは、貧血や腎機能の低下、妊娠中など、平均的な血糖値と値がずれることがある検査です。ずれが疑われる場合には、血糖値を中心に判断されます。

1型糖尿病の診断基準(発症様式別)

1型糖尿病は、発症の様式によって次の3つに分けられ、それぞれ診断基準が定められています。単独の数値だけで決まるものではなく、症状の出方、経過、抗体、Cペプチド値を合わせて判断されます。

発症の様式 特徴と診断のポイント
急性発症1型糖尿病 ①口渇・多飲・多尿などの高血糖症状の出現後、おおよそ3ヵ月以内にケトーシスまたはケトアシドーシスに陥る
②糖尿病と診断された早期から、継続してインスリン療法を必要とする(血糖が一時的に安定する「ハネムーン期」がみられることもある)
③膵島関連自己抗体が陽性であることが多い
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM) ①糖尿病の診断時にはケトーシスやケトアシドーシスを認めず、直ちにインスリン療法を必要としない
②経過のなかでインスリン療法が必要になる(清涼飲料水ケトーシスで発症した場合はこの限りではない)
③膵島関連自己抗体(抗GAD抗体、ICA)が陽性
劇症1型糖尿病 ①高血糖症状の出現後、おおよそ1週間以内にケトーシスまたはケトアシドーシスに陥る
②初診時の随時血糖値が288 mg/dL以上、かつHbA1cが8.7%未満
③尿中Cペプチドが10 µg/日未満、または空腹時血中Cペプチドが0.3 ng/mL未満(かつグルカゴン負荷後または食後2時間の血中Cペプチドが0.5 ng/mL未満)

いずれの型でも、膵島関連自己抗体が陰性であっても1型糖尿病を否定できない点には注意が必要です。抗体が陰性でも、ケトーシスを伴って急激に発症しインスリン療法が必要であれば、1型糖尿病が疑われます。

1型糖尿病に特有の検査

膵島関連自己抗体

すい臓のβ細胞に対する自己抗体をまとめて「膵島関連自己抗体」と呼びます。1型糖尿病では、複数の抗体を同時に測定し、いずれかが陽性であれば自己免疫によるβ細胞の破壊が示唆されます。

抗体名 略称 特徴
抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体 抗GAD抗体 1型糖尿病でもっとも高頻度に検出されます。緩徐進行1型糖尿病の診断基準にも用いられます。
抗IA-2抗体 IA-2A 小児・若年で発症した1型糖尿病で陽性になりやすいとされています。
抗亜鉛輸送担体8抗体 ZnT8A 検出される頻度は報告によって幅があります。
インスリン自己抗体 IAA インスリン療法を始める前の小児で検出されることがあります。インスリン療法開始後は、注射したインスリンの影響を受けやすくなります。
膵島細胞抗体 ICA 蛍光抗体法で測定されます。緩徐進行1型糖尿病の診断基準に含まれます。

抗体の種類によって、年齢や発症の仕方による陽性の傾向は異なります。どの抗体を測定するかは、年齢や経過、施設で測定できる項目をふまえて主治医が判断します。

Cペプチド検査

Cペプチドは、インスリンが作られるときにインスリンと等モルで分泌される物質です。注射したインスリンの影響を受けないため、膵臓がどの程度インスリンを作っているかを評価できます。

  • 空腹時血中Cペプチド:0.6 ng/mL未満、または24時間尿中Cペプチドが20 µg/日以下であれば、インスリン依存状態の可能性が高いとされています。
  • グルカゴン負荷試験:グルカゴンを静注し、負荷後の血清Cペプチドが1.0 ng/mL未満、あるいは負荷による増加が0.5 ng/mL未満であれば、インスリン依存状態の目安と考えられています。

Cペプチド値はあくまで目安であり、インスリン依存状態かどうかは経過を含めて総合的に判断されます。また、腎機能が低下していると血中Cペプチドは高めに、尿中Cペプチドは低めに出るため、評価が難しくなります。

ケトン体の検査

尿ケトン体や血中ケトン体の検査は、ケトーシスやケトアシドーシスの有無を確認するために行います。ケトーシスの存在は、急性発症1型糖尿病と劇症1型糖尿病の診断基準に含まれる重要な所見です。高血糖が続くときや、発熱などで体調を崩したときにも確認されます。

その他の検査

  • HLA:糖尿病の成因分類の参考として調べられることがあります。
  • 甲状腺機能・抗甲状腺抗体:1型糖尿病では自己免疫性甲状腺疾患を合併することがあるため、診断時や経過中に確認されます。
  • 遺伝子検査:MODYやミトコンドリア糖尿病など、単一遺伝子の異常による糖尿病が疑われる場合に検討されます。

劇症1型糖尿病の診断

劇症1型糖尿病は日本に多いタイプで、次の3項目をすべて満たす場合に診断されます。

  1. 口渇・多飲・多尿などの高血糖症状の出現後、おおよそ1週間以内にケトーシスまたはケトアシドーシスに陥る(初診時に尿ケトン体陽性、または血中ケトン体の上昇のいずれかを認める)
  2. 初診時の随時血糖値が288 mg/dL以上、かつHbA1cが8.7%未満
  3. 発症時の尿中Cペプチドが10 µg/日未満、または空腹時血中Cペプチドが0.3 ng/mL未満であり、かつグルカゴン負荷後(または食後2時間)の血中Cペプチドが0.5 ng/mL未満

発症前に耐糖能異常があった場合は、2番目の血糖値やHbA1cの数値が必ずしも当てはまりません。その場合も含め、最終的な判断は経過を含めて行われます。

劇症1型糖尿病の特徴として、次のような点が挙げられます。

  • 血糖値のわりにHbA1cが低い(発症からの期間が短いため)
  • 発症前に感冒様症状や腹痛、吐き気などの前駆症状がみられることがある
  • すい臓の酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の上昇を伴うことがある
  • 妊娠中や出産後に発症した報告がある
  • 免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫療法で使われる薬)の副作用として、劇症1型糖尿病や急性発症1型糖尿病に似た発症が報告されている

進行が非常に速く、早期にインスリン療法が必要になります。口渇・多飲・多尿が急に出た、息苦しい、意識がはっきりしないといった状態があるときは、早めに医療機関にご連絡をおすすめします。

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM/LADA)の診断

緩徐進行1型糖尿病は、膵島関連自己抗体が陽性でありながら、診断時にはケトーシスを認めず、直ちにはインスリン療法を必要としないタイプです。次の2点を満たし、膵島関連自己抗体が陽性である場合に診断されます。

  1. 糖尿病の診断時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスを認めず、直ちには血糖を下げるためのインスリン療法が必要とならない
  2. 経過のなかでインスリン療法が必要となる

診断の確定には時間がかかることがあります。糖尿病と診断されてから3ヵ月(典型的には6ヵ月)を過ぎてインスリン療法が必要になり、内因性インスリン欠乏(空腹時血清Cペプチド0.6 ng/mL未満)が確認された時点で診断が確定します。

初期には2型糖尿病に似た経過をたどるため、いったん2型糖尿病として治療が始まり、その後の経過で1型糖尿病と分かる例もあります。次のような点が手がかりになります。

  • 抗GAD抗体などの膵島関連自己抗体が陽性
  • 経口血糖降下薬の効果が徐々に弱まってくる
  • Cペプチド値が経時的に低下してくる
  • 瘦せ型である、あるいは短期間で体重が減少した
  • 糖尿病の家族歴が目立たない

緩徐進行1型糖尿病では、インスリン療法の開始が遅れるとケトアシドーシスを起こすことがあります。経過中に血糖コントロールが急に悪化した場合には、主治医にご相談ください。

鑑別診断

1型糖尿病と紛らわしい、あるいは区別が必要になる糖尿病には次のようなものがあります。

  • 2型糖尿病:インスリン抵抗性やインスリン分泌低下が主体で、肥満を伴うことが多いタイプです。ただし瘦せ型の2型糖尿病もあり、体型だけで区別はできません。
  • MODY(若年発症成人型糖尿病):単一遺伝子の異常による糖尿病です。若年で発症し、家族内に複数の糖尿病患者がいる場合に疑われます。
  • ミトコンドリア糖尿病:母系遺伝を示し、難聴を伴うことがあるタイプです。
  • 続発性糖尿病:慢性膵炎や膵切除後、クッシング症候群や先端巨大症などの内分泌疾患、ステロイドなどの薬剤が原因となるものです。
  • 妊娠糖尿病:妊娠中に初めて見つかった糖代謝異常です。

成因の分類では、家族歴や発症年齢、経過、体型、膵島関連自己抗体、HLA、インスリン分泌能とインスリン抵抗性、遺伝子検査などの情報を総合して判断します。一人の方が複数の成因を持つこともあります。

診断後の対応

1型糖尿病と診断された場合は、インスリン療法が必要と判断され、その方法や量は主治医が決めます。あわせて次のような評価が行われます。

  • 合併症の評価:眼底検査、尿アルブミン、神経の検査など。診断時点で既に進行している場合もあるため、早期に確認されます。
  • 甲状腺機能の確認:自己免疫性甲状腺疾患の合併がないかを確認します。
  • セリアック病のスクリーニング:欧米のガイドラインでは推奨されていますが、日本では頻度が低いとされています。
  • 療養支援:インスリンの注射方法、血糖測定、低血糖への対応、食事や運動について、療養指導が行われます。

診断後の治療や生活の詳細は、次のページもあわせてご確認ください。

よくある質問

1型糖尿病の診断基準は何ですか?

1型糖尿病は発症の様式によって急性発症・緩徐進行・劇症の3つに分けられ、それぞれに診断基準があります。いずれの場合も、血糖値とHbA1cで糖尿病であることを確認したうえで、膵島関連自己抗体やCペプチド値、発症からの経過を組み合わせて総合的に判断します。

抗GAD抗体とは何ですか?

抗GAD抗体(グルタミン酸脱炭酸酵素抗体)は膵島関連自己抗体のひとつで、1型糖尿病でもっとも高頻度に検出されます。陽性であれば自己免疫によるβ細胞の破壊が示唆されますが、抗体の値だけで重症度や進行の速さが決まるものではありません。

Cペプチド検査は何を調べますか?

Cペプチドはインスリンと等モルで分泌される物質で、注射したインスリンの影響を受けずに、膵臓がどの程度インスリンを作っているかを評価できます。空腹時血中Cペプチドが0.6 ng/mL未満、24時間尿中Cペプチドが20 µg/日以下であれば、インスリン依存状態の可能性が高いとされています。

劇症1型糖尿病の診断はどう行いますか?

①高血糖症状の出現後おおよそ1週間以内にケトーシスまたはケトアシドーシスに陥る、②初診時の随時血糖値が288 mg/dL以上かつHbA1cが8.7%未満、③尿中Cペプチドが10 µg/日未満、または空腹時血中Cペプチドが0.3 ng/mL未満でグルカゴン負荷後の血中Cペプチドが0.5 ng/mL未満、の3項目を満たす場合に診断されます。

1型糖尿病の診断に遺伝子検査は必要ですか?

通常、1型糖尿病の診断に遺伝子検査は必須ではありません。ただし、MODY(若年発症成人型糖尿病)やミトコンドリア糖尿病など、単一遺伝子の異常による糖尿病が疑われる場合には考慮されます。

1型糖尿病と2型糖尿病はどのように見分けるのですか?

発症年齢や経過、肥満の有無、ケトーシスの有無、膵島関連自己抗体、Cペプチド値などを組み合わせて判断します。若年で急激に発症しケトーシスを伴う場合は1型が疑われますが、成人発症でゆっくり進行する緩徐進行1型糖尿病もあり、経過を追って判断することもあります。

自己抗体が陰性でも1型糖尿病と診断されることはありますか?

あります。膵島関連自己抗体が陰性であっても1型糖尿病を否定できないため、ケトーシスの有無、インスリン療法の必要性、Cペプチド値の推移などを含めて総合的に判断されます。

健康診断で血糖値の異常を指摘された場合、どのような検査を受けますか?

まず血糖値とHbA1cを同日に測定し、糖尿病かどうかを確認します。糖尿病と確定した場合は、発症の様式や成因を判断するために、膵島関連自己抗体やCペプチド値、必要に応じてケトン体やHLAなどの検査が行われます。

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