1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞が何らかの原因で破壊され、インスリンが絶対的に不足する疾患です。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、その産生がほぼ完全に失われるため、生涯にわたるインスリン補充療法が必須となります。
1型糖尿病の病態
膵臓のβ細胞は、食後に上昇した血糖値に応じてインスリンを分泌し、全身の細胞がグルコースを取り込むのを助けます。1型糖尿病では、このβ細胞が自己免疫機序などによって破壊されるため、インスリンを産生できなくなります。
結果として、血糖値が上昇し続けるだけでなく、細胞はエネルギー源であるグルコースを利用できず、脂肪や筋肉を分解してエネルギーをおうとします。この状態が進行すると、ケトアシドーシスと呼ばれる重篤な代謝異常を引き起こします。
1型糖尿病の原因
1型糖尿病の発症には、以下の要因が複雑に関与していると考えられています。
自己免疫機序
最も一般的なタイプ(1A型)では、免疫系が誤って自身のβ細胞を攻撃・破壊します。血液中に以下の自己抗体が検出されることがあります。
- 抗GAD抗体(グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体)
- 抗IA-2抗体
- 抗インスリン抗体(IAA)
- 抗ZnT8抗体
遺伝的要因
HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子、特にHLA-DR3/DR4との関連が知られています。ただし、遺伝的素因があるからといって必ず発症するわけではなく、環境要因との相互作用が重要です。
環境要因
ウイルス感染(エンテロウイルス、サイトメガロウイルスなど)、食事要因、ビタミンD不足などが発症の引き金になる可能性が指摘されていますが、完全には解明されていません。
特発性1型糖尿病(1B型)
自己抗体が検出されず、原因不明のβ細胞破壊が起こるタイプです。アジア・アフリカ系に多いとされています。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
1型と2型は「糖尿病」という名称は同じですが、原因・病態・治療法が根本的に異なる疾患です。
| 項目 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
|---|---|---|
| 原因 | β細胞の破壊(自己免疫など) | インスリン抵抗性+相対的インスリン不足 |
| インスリン産生 | ほぼ完全に消失 | 残存している(程度は様々) |
| 発症年齢 | 小児・若年者に多い(全年齢で発症) | 中高年に多い(若年化も進行) |
| 発症速度 | 急激(数日〜数週間) | 緩徐(数年〜数十年) |
| 体型 | 痩せていることが多い | 肥満を伴うことが多い |
| 治療の柱 | インスリン療法(必須) | 生活習慣改善+経口薬±インスリン |
| ケトアシドーシス | 発症時・インスリン中止時に高リスク | 比較的稀 |
| 予防 | 現時点で予防法なし | 生活習慣改善で予防可能 |
1型糖尿病の分類
発症速度による分類
- 急性発症型:数日〜数週間でケトアシドーシスを伴って発症。小児に多い。
- 緩徐進行型(SPIDDM/LADA):数ヶ月〜数年かけて徐々にβ細胞機能が低下。成人に多い。初期は経口薬が有効なこともあるが、最終的にインスリンが必要になる。
- 劇症1型糖尿病:数日以内に急激に発症。ケトアシドーシスを伴い、発症時のHbA1cがほぼ正常なのが特徴。日本に多い亜型。
1型糖尿病の疫学
- 日本の1型糖尿病患者数は約10万人と推定
- 糖尿病患者全体の約5%を占める
- 年間新規発症率は人口10万人あたり1.5〜2.5人
- 小児(0〜14歳)の発症率は北欧諸国が最も高く、日本は比較的低い
- 発症のピークは小児期と思春期にあるが、成人以降の発症も少なくない
1型糖尿病の症状
代表的な初期症状は以下の通りです。詳細は1型糖尿病の症状のページをご確認ください。
- 多飲:のどが渇き、大量の水分を摂取する
- 多尿:尿の回数・量が増える
- 体重減少:食欲があるにもかかわらず体重が減る
- 全身倦怠感・疲労感
- 視力低下:高血糖による水晶体の膨潤
これらの症状が数日〜数週間で急激に現れる場合は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に進行するリスクがあるため、速やかな受診が必要です。
1型糖尿病の診断
診断には血糖値・HbA1cの測定に加え、自己抗体の検出やCペプチド値(インスリン産生能の評価)が重要です。詳細は診断・検査のページをご確認ください。
1型糖尿病の治療
1型糖尿病の治療の柱はインスリン補充療法です。経口血糖降下薬のみで治療できる2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病ではインスリンが必須です。
- インスリン療法(基礎):複数回注射法(MDI)の基本
- インスリンポンプ療法:CSII(持続皮下インスリン注入)
- CGM:持続血糖モニタリングによる血糖管理の最適化
よくある質問
1型糖尿病と2型糖尿病の根本的な違いは何ですか?
1型糖尿病は膵臓のβ細胞が破壊されインスリンが絶対的に不足する状態です。2型糖尿病はインスリン抵抗性や相対的なインスリン不足が主因です。原因・発症機序・治療法が根本的に異なります。
1型糖尿病は子どもだけがかかる病気ですか?
いいえ。1型糖尿病は小児・若年者に多いですが、成人以降に発症するケース(LADA:成人発症緩徐進行1型糖尿病)も少なくありません。全年齢で発症する可能性があります。
1型糖尿病は遺伝しますか?
遺伝的要因(HLA遺伝子など)は関与しますが、1型糖尿病は単一遺伝子疾患ではありません。遺伝的素因に環境要因(ウイルス感染など)が加わって発症すると考えられています。
1型糖尿病の患者数はどのくらいですか?
日本の1型糖尿病患者数は約10万人と推定されています。糖尿病患者全体の約5%を占め、2型糖尿病に比べて稀な疾患です。
1型糖尿病は治りますか?
現時点では1型糖尿病を根本的に治す治療法は確立されていません。インスリン補充療法により血糖をコントロールしながら、合併症を予防し、健康な生活を送ることが治療の目標です。
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