カーボカウントとは?糖質早見表とICR・ISFの考え方



1型糖尿病の食事管理において、カーボカウント(Carbohydrate Counting)は中心となる考え方です。食事に含まれる糖質の量を把握し、それをインスリン療法に活かしていくことで、食後の血糖値の変動を小さくしていくことを目指します。

カーボカウントは、糖質を「減らす」ための方法ではなく、糖質の量を「知る」ための方法です。この記事では、糖質量の調べ方と、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に基づく食品別の糖質量早見表、インスリン比(ICR)と血糖修正係数(ISF)の考え方を解説します。

この記事の要点

  • カーボカウントは、食事に含まれる糖質の量を把握し、インスリン療法に活かす方法です。
  • 日本では、糖質10gを「1単位」として数えることが一般的です。
  • 糖質量は、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに「炭水化物 − 食物繊維総量」で算出しています。
  • 糖質量から追加インスリンの量を決める部分は、主治医が設定した値と指示に沿って行います。自己判断での変更は行いません。

カーボカウントの3つのステップ

カーボカウントは、次の3つのステップで進めます。

  1. 食品の糖質量を把握する:食品成分表、栄養成分表示、目分量などを用います。
  2. 糖質量に合わせた追加インスリンの量を決める:主治医が設定したインスリン比(ICR)などの値をもとに、主治医の指示に沿って決めます。
  3. 食事の前にインスリンを注射する:注射のタイミングや量は、主治医の指示に従います。

ステップ2の「糖質量からインスリン量を決める」部分は、自己判断で行うものではありません。詳しくは後半の「インスリン比(ICR)」の項で説明します。

糖質量を把握する3つの方法

1. 食品成分表やアプリで調べる

文部科学省の「日本食品標準成分表」や、それを収載したスマートフォンのアプリを使って調べる方法です。加工食品については、メーカーが公表している栄養成分情報を確認します。外食の場合は、チェーン店が公表している栄養情報が役立ちます。

2. 栄養成分表示から計算する

加工食品の栄養成分表示には、通常「炭水化物」と「食物繊維」が記載されています。カーボカウントで用いる糖質は、次の計算で求められます。

  • 糖質(g)= 炭水化物(g)− 食物繊維(g)

「糖質」として表示されている商品であれば、その値をそのまま使えます。表示の単位(1袋あたり・100gあたり・1食あたり)を必ず確認してください。

3. 目分量に慣れる

毎回はかりを使うのは現実的ではないため、よく食べる食品については目分量で見積もれると便利です。最初のうちは計量しながら食べ、実際の量と自分の目分量のずれを確認していくと、少しずつ精度が上がっていきます。

食品別の糖質量早見表

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の値をもとに、よく使う食品の糖質量をまとめました。糖質は「炭水化物 − 食物繊維総量」で算出しています。カーボカウントでは、糖質10gを1単位として数えることが一般的です。

主食(ごはん・パン・めん)

主食(ごはん・パン・めん)の糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
ごはん(精白米) 茶碗1杯(150g) 約53g 約5.3単位
玄米ごはん 茶碗1杯(150g) 約51g 約5.1単位
食パン 6枚切り1枚(60g) 約25g 約2.5単位
うどん(ゆで) 1玉(200g) 約41g 約4.1単位
そば(ゆで) 1玉(200g) 約46g 約4.6単位
スパゲッティ(ゆで) 1人前(ゆで250g・乾麺100g相当) 約73g 約7.3単位
もち(切り餅) 1個(50g) 約25g 約2.5単位
おにぎり 1個(100g) 約39g 約3.9単位
中華麺(ゆで) 1玉(200g) 約53g 約5.3単位
ロールパン 1個(30g) 約14g 約1.4単位
コーンフレーク 1食(40g) 約32g 約3.2単位
オートミール 1食(30g) 約18g 約1.8単位

いも類・糖質の多い野菜

いも類・糖質の多い野菜の糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
じゃがいも(蒸し) 中1個(150g) 約22g 約2.2単位
さつまいも(蒸し) 1/2本(100g) 約30g 約3.0単位
かぼちゃ(西洋かぼちゃ・ゆで) 100g 約17g 約1.7単位
さといも(水煮) 中1個(100g) 約11g 約1.1単位
ながいも(生) 100g 約13g 約1.3単位
とうもろこし(ゆで) 1本(可食部150g) 約23g 約2.3単位

いも類は、生の状態よりも加熱した後のほうが糖質が多くなります(じゃがいもは生8.4g、蒸し14.6g/可食部100gあたり)。実際に食べる状態の値で考えることが大切です。

果物

果物の糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
バナナ 1本(可食部100g) 約21g 約2.1単位
りんご 1/2個(150g) 約21g 約2.1単位
みかん 1個(80g) 約9g 約0.9単位
いちご 5粒(75g) 約5g 約0.5単位
キウイフルーツ(緑肉種) 1個(可食部85g) 約9g 約0.9単位
ぶどう(皮なし) 1房(可食部100g) 約15g 約1.5単位
かき(甘がき) 1個(可食部150g) 約21g 約2.1単位
もも(白肉種) 1個(可食部150g) 約13g 約1.3単位

乳製品・飲み物

乳製品・飲み物の糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
牛乳 コップ1杯(200mL) 約10g 約1.0単位
プレーンヨーグルト(無糖) 1個(100g) 約5g 約0.5単位
オレンジジュース(100%) コップ1杯(200mL) 約21g 約2.1単位
コーラ ペットボトル1本(500mL) 約57g 約5.7単位
豆乳(調製豆乳) コップ1杯(200mL) 約9g 約0.9単位
野菜ジュース(濃縮タイプ) コップ1杯(200mL) 約14g 約1.4単位
スポーツドリンク ペットボトル1本(500mL) 約26g 約2.6単位
アイスクリーム カップ1個(100mL) 約23g 約2.3単位

飲み物は、糖質が多く吸収も早いため、血糖値が急に上がりやすい食品です。とくに清涼飲料水は、量に注意が必要です。

菓子・菓子パン

菓子・菓子パンの糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
あんパン 1個(80g) 約41g 約4.1単位
ショートケーキ 1個(100g) 約42g 約4.2単位
チョコレート(ミルク) 板1枚(50g) 約26g 約2.6単位
ポテトチップス 1袋(60g) 約30g 約3.0単位
ビスケット(ソフト) 3枚(30g) 約18g 約1.8単位
カスタードプリン 1個(100g) 約14g 約1.4単位

調味料・甘味料

調味料・甘味料の糖質量と1単位の目安
食品 目安の1回量 糖質 1単位(糖質10g)相当
上白糖 小さじ1(3g) 約3g 約0.3単位
はちみつ 大さじ1(21g) 約17g 約1.7単位
いちごジャム(高糖度) 大さじ1(20g) 約12g 約1.2単位

調味料や甘味料にも糖質が含まれます。とくに砂糖・はちみつ・ジャムは少量でも糖質が多いため、料理や飲み物に加える分も含めて数えると、より実際に近い見積もりになります。

糖質が少ない食品(可食部100gあたり)

糖質が少ない食品の糖質(可食部100gあたり)
食品 糖質(100gあたり)
キャベツ(生) 約3.4g
きゅうり(生) 約1.9g
ブロッコリー(ゆで) 約0.9g
アボカド(生) 約2.3g
木綿豆腐 約0.4g
納豆(糸引き納豆) 約5.4g
卵(全卵・生) 約0.4g
鶏むね肉(皮なし・生) 約0.1g
しらたき 約0.1g
トマト(生) 約3.7g
だいこん(皮なし・生) 約2.8g
なす(生) 約2.9g
ピーマン(青・生) 約2.8g
レタス(生) 約1.7g
ほうれんそう(生) 約0.3g
プロセスチーズ 約1.3g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに、糖質=炭水化物−食物繊維総量として算出(可食部100gあたり)。

早見表を使うときの注意

  • 糖質は、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の可食部100gあたりの値から「炭水化物 − 食物繊維総量」で算出したものです。
  • 「目安の1回量」は一般的な量であり、実際の量とは異なることがあります。市販品は栄養成分表示を、手作りの料理は計量をして確認してください。
  • 調理法によって糖質量は変わります。いも類のように、加熱によって糖質が増える食品もあります。
  • 菓子パンやケーキなど調理済みの食品の値は、日本食品標準成分表では参考値として示されています。
  • 「1単位=糖質10g」は日本でよく用いられる数え方です。施設や資料によって扱いが異なることがあるため、指導を受けた数え方に合わせてください。
  • 同じ食品でも、商品や調理法、食べる量によって糖質量は変わります。この表は目安としてご利用ください。

インスリン比(ICR:Insulin-to-Carbohydrate Ratio)

インスリン比(ICR)は、食事の糖質量に対してどれくらいの追加インスリンが必要かを表す値で、インスリン調整の目安として用いられます。

大切なのは、ICRは主治医が計算して設定する値だという点です。

  • ICRは、1日の総インスリン量、血糖値の動き、食事の内容、運動量、生活リズムなどをもとに、主治医が計算して設定します。
  • 同じ方でも、体重の変化、成長、運動量、体調、季節などによって変わることがあり、定期的に見直されます。
  • 自分で計算してインスリン量を決めたり、自己判断でICRを変更したりすることはおすすめしません。低血糖や高血糖につながるおそれがあります。

カーボカウントで身につけた「糖質量を把握する力」は、このICRの調整にも役立ちます。食べた内容と量、食前・食後の血糖値を記録して主治医に伝えると、調整がしやすくなります。

血糖修正係数(ISF:Insulin Sensitivity Factor)

血糖修正係数(ISF)は、追加インスリン1単位が血糖値をどの程度下げるかを表す値です。高血糖時の追加注射(修正注射)の量を考えるときに用います。

  • ISFも、ICRと同じく主治医が計算して設定する値です。
  • 血糖値が高いからといって、自己判断で何単位も追加すると、重い低血糖を起こすおそれがあります。
  • 体調や運動、食事の内容によってもインスリンの効き方は変わります。

高血糖が続くとき、吐き気や腹痛、呼吸の変化、強い倦怠感などがあるときは、ケトアシドーシスの可能性があります。症状がある場合は、早めに医療機関へご連絡をおすすめします。

血糖指数(GI:Glycemic Index)

GIは、食品が血糖値に与える影響の速さを示す指標です。同じ糖質量でも、GIが低い食品は血糖値の上昇が緩やかとされています。

  • 高GIの食品(70以上):白米、食パン、じゃがいも、清涼飲料水など
  • 中GIの食品(56〜69):玄米、全粒粉パン、バナナなど
  • 低GIの食品(55以下):豆類、野菜、りんごやオレンジなどの果物、全粒穀物など

ただし、実際の血糖値の動きは、食べ合わせや量、調理法、注射のタイミングによっても変わります。GIだけで判断するのではなく、実際の血糖値を確認しながら考えていくことが大切です。

外食時のカーボカウント

外食時は、次のような方法で糖質量を推定します。

  • レストランが公表している栄養情報を利用する
  • スマートフォンのアプリで類似の食品や料理を検索する
  • 目分量で推定する(慣れが必要です)

外食では糖質量の推定が難しくなるため、主治医と相談のうえで量をやや控えめに設定し、食後に血糖値を確認して次回に活かす方法がとられることもあります。定食や丼ものなど、ごはんの量が分かりやすい料理は推定しやすいといえます。

カーボカウントを続けるポイント

  • 糖質を含む食品も、量を調整しながら摂取できます:極端な糖質制限は、低血糖や栄養の偏りにつながることがあるため、主治医や管理栄養士に相談してください。
  • 食物繊維を意識して摂る:野菜、豆類、きのこ類、海藻類などを組み合わせると、食後の血糖値の上昇が緩やかになりやすいといわれています。
  • 食事の時間をできるだけ一定にする:食事のリズムが整うと、血糖値の動きも読みやすくなります。
  • 記録をつける:食べたもの・量・血糖値を記録すると、自分の傾向が見えてきます。
  • 間食や低血糖時の糖質補給も含めて考える:低血糖時の糖質補給は治療の一部です。量を決めておくと安心です。

よくある質問

カーボカウントとは何ですか?

カーボカウントとは、食事に含まれる糖質の量を把握し、それをインスリン療法に活かしていく方法です。1型糖尿病の食事管理の中心となる考え方で、糖質を「減らす」ためではなく、糖質の量を「知る」ための方法です。

カーボカウントの「1単位」とは何ですか?

日本では、糖質10gを「1単位」として数えることが一般的です。たとえばごはん茶碗1杯(150g)の糖質は約53gなので、約5.3単位となります。施設や資料によって扱いが異なることがあるため、指導を受けた数え方に合わせてください。

食品の糖質量はどうやって調べればよいですか?

食品成分表やスマートフォンのアプリで調べる方法、加工食品の栄養成分表示から「炭水化物 − 食物繊維」で計算する方法、目分量で見積もる方法があります。最初は計量しながら食べることで、目分量の精度が上がっていきます。

インスリン比(ICR)とは何ですか?

インスリン比(ICR:Insulin-to-Carbohydrate Ratio)は、食事の糖質量に対してどれくらいの追加インスリンが必要かを表す値で、インスリン調整の目安として用いられます。この値は、1日の総インスリン量や血糖値の動きなどをもとに主治医が計算して設定するもので、自己判断で変更することはおすすめしません。

血糖修正係数(ISF)とは何ですか?

血糖修正係数(ISF:Insulin Sensitivity Factor)は、追加インスリン1単位が血糖値をどの程度下げるかを表す値です。高血糖時の追加注射の量を考えるときに用います。ISFも主治医が設定する値で、自己判断で何単位も追加すると重い低血糖につながるおそれがあります。

1型糖尿病で食べてはいけないものはありますか?

1型糖尿病だからといって、食べられない食品があるわけではありません。糖質を含む食品も、糖質量を把握し、インスリン療法と組み合わせて量を調整しながら摂取できます。ただし、清涼飲料水のように糖質が多く吸収の早い飲み物は血糖値が急に上がりやすいため、量とタイミングに注意が必要です。

外食時のカーボカウントはどうすればいいですか?

レストランの栄養情報やアプリ、食品成分表を利用して糖質量を推定します。外食では推定が難しくなるため、主治医と相談のうえで量をやや控えめに設定し、食後に血糖値を確認して振り返る方法がとられることもあります。

血糖指数(GI)とは何ですか?

GI(Glycemic Index)は、食品が血糖値に与える影響の速さを示す指標です。同じ糖質量でもGIが低い食品は血糖値の上昇が緩やかとされています。ただし、実際の血糖値の動きは食べ合わせや量、注射のタイミングでも変わるため、GIだけで判断するのではなく、実際の血糖値を確認することが大切です。

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