ノルバスク+リピトール=カデュエット その1
ノルバスク(一般名:アムロジピン)とリピトール(一般名:アトルバスタチン)の合剤であるカデュエットがまもなく発売される。日本での規格は、ノルバスクの2規格(2.5mg/5mg) リピトールの2規格(5mg/10mg) 以上の2×2=4 で4規格となっている。詳しくはファイザーのプレスリリースをご覧いただきたい。
ファイザーによると、カデュエットは以下のように命名されたそうだ。Cardiovascular Duetでカデュエットになったそうである。PubMedにはこんな記載がある。
Atorvastatin and amlodipine: the successful duet that led to Caduet.
カデュエットはファイザーによる「後発品対策」の色彩が強い商品である。「高血圧症」「脂質異常症」といった異なる疾患に対する薬を混ぜて売るとは何事だ、という意見もよく目にする。合剤は新薬扱いなので、特許切れのノルバスク、まもなく特許が切れるリピトールの市場を少しでも守ろうという意図がある。両者とも市場は大きく、両者を処方されている患者も少なくない。ノルバスク(または他の長時間作用型カルシウム拮抗薬)とリピトール(または他のスタチン)を併用している患者の「薬でお腹いっぱいになってしまう。少しでも錠数を減らしたい」というニーズを発掘することで、患者満足度を満たしながらノルバスク・リピトールの後発品へのシフトを抑制し、あわよくば他社製品のシェアを食おうという商品であると考えられる。ファイザーの選択は決して特異なものではない。武田薬品工業はブロプレス(一般名:カンデサルタン)という降圧剤とアクトス(一般名:ピオグリタゾン)という経口糖尿病薬を2012年にリリースする予定だ。これも、特許切れを迎える主力商品(対象疾患は異なる)の合剤というよく似た組み合わせだ。背景には製薬各社の深刻な新薬候補物質の不足がある。今後各社の大型商品が相次いで特許切れを向かえる。いわゆる「2010年問題」である。特許が切れると急速に後発品にシェアを奪われ、収益は悪化する。各社は新薬候補物質を持つ新興企業を相次いで買収するなどして対応に追われているが、追いついていないのが実情だ。合剤には患者の利便性の向上などメリットもあるが、元の薬(単剤)に加え合剤を置く必要に迫られ、その場合はカデュエットの例で明らかなように複数規格が存在することにより調剤薬局では在庫を抱えることとなり経営を圧迫する要因となる。今後は後発品の取り扱いが増えることが予想され、さらに在庫は膨らむ。後発品に関しては調剤薬局を経由せず宅配するシステムを確立することなど、新しい取り組みも考えても良いのではないだろうか。宅配薬局のシステムが確立されれば、アクセスの悪いエリアが少なくない船橋市の糖尿病患者に対するメリットになろう。