メトホルミン

ピオグリタゾンとメトホルミンの合剤

24/06/2010

アクトスとメトホルミンの合剤

ピオグリタゾン

ピオグリタゾン

わが国では武田薬品工業がピオグリタゾン(アクトス)とメトホルミンの合剤を先日発売している。「メタクト配合錠」であるが、含有するメトホルミンは「徐放」(ゆっくり、徐々に放出されること)ではなかった。何故こんなことを記事にするかといえば、最後に引用するように同社ではアクトス+メトホルミン徐放剤の合剤を米国で発売しているからである。この辺の事情については、 旭川の薬剤師道場(ブログ) さんの下記記事に詳しいので是非ご一読願いたい。

メタクト配合錠のメトホルミンは徐放ではなかった…

上記の記事から引用する。

1日1回500mg投与と250mg1日2回投与でHbA1cの推移に差が認められなかったようです。それでメトホルミンを徐放にする必要性が無かったようですね。 となると、飲み忘れなどでメトホルミンの残薬が多いような患者さんの場合は、1日2回ではなく1日1回に1度に飲んでもらうような工夫はどうなのでしょう か?(中略)メトグルコな どの高用量のメトホルミンでは副作用なども考慮して1回にまとめて飲むようなことは出来ないかもしれませんが、1日500mg程度の場合それが可能だとし たら、患者さんのメリットにもなりますね。(後略)

この記事がリリースされた日(6/8)からこのことがずっと気になっていた。
の糖尿病患者さんへの処方で一番多いのがSU剤に加えてメトホルミン(250mg)を1日2錠(朝・夕)というものである。500mg1回投与でも結果が同じならばその方が患者さんもずっと楽だし、飲み忘れもない。そう考えて、数例の患者さんのメトホルミンの用法を変えてみた。500mgを朝夕2回→500mgを夕方1回というように。1ヵ月後に再診したのはまだ2,3例であるがHbA1c値は横ばいまたは若干低下であった。nが少ないので断定的なことは言えないが、少なくとも悪い方法ではなさそうである。 この件については、現在観察中の例が結構あるためデータが纏まり次第改めてご報告したい。

今回は話が本来の合剤と反れてしまったが、米国でリリースされているアクトス+メトホルミン徐放製剤合剤(アクトプラスメットXR)は日本市場に投入する予定は無いようだ。アクトス15mg+メトホルミン1000mg, アクトス30mg+メトホルミン1000mgの2剤形だ。私の想像だが、500mgの合剤なら先述のように徐放でなくとも違いは無い。また、米国版はメトホルミンの含有量が1000mgと多いからそのまま日本で出すわけには行かないということだろうか。もっとも、わが国においてもメトグルコの登場でメトホルミンの用量規制緩和の方向に進みそうではあるのだが。

Elcelyxという会社が、Metformin DR :metformin delayed-releaseという薬剤を開発している。メトホルミンDRは下部腸管(回腸)で作用するように設計されている。腸管での作用を平坦化させ、血中濃度が急激に高まってしまうのを防ぐためだ。血中濃度が上がりにくい一方で血糖降下作用は強く、乳酸が上がりにくいというメリットがある。これが世に出てくれば、メトホルミンの新たな選択肢が増え、今よりもより良いパフォーマンスが得られる患者さんが増えるだろう。恩恵に預かれるのは船橋市の糖尿病患者さんだけではない。

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