1型糖尿病の治療の柱はインスリン補充療法です。膵臓のβ細胞がインスリンを産生できなくなった分を、外部から補充する必要があります。インスリン療法には大きく2つの方法があります。
複数回注射法(MDI:Multiple Daily Injections)
1型糖尿病の標準的な治療法です。基礎インスリンと追加(ボーラス)インスリンを組み合わせて、生理的なインスリン分泌を模倣します。
基礎インスリン(长效インスリン)
24時間にわたって一定量のインスリンを供給し、空腹時血糖をコントロールします。1日1〜2回注射します。
| 製剤名(一般名) | 商品名 | 作用時間 | 投与回数 |
|---|---|---|---|
| インスリン グラルギン | ランタス、 Toujeo | 約24時間 | 1日1回 |
| インスリン デグルデク | トレシーバ | 42時間以上 | 1日1回 |
| インスリン デテミル | レベミル | 約12〜24時間 | 1日1〜2回 |
追加インスリン(速効・超速効インスリン)
食事に伴う血糖上昇を抑えるために、毎食前に注射します。食事の糖質量に応じて用量を調整します(カーボカウント)。
| 製剤名(一般名) | 商品名 | 作用発現 | peak | 持続時間 |
|---|---|---|---|---|
| インスリン リスプロ | ヒューマログ | 15分 | 30〜90分 | 3〜5時間 |
| インスリン アスパルト | ノボラピッド | 10〜20分 | 1〜3時間 | 3〜5時間 |
| インスリン グルリシン | アプリドラ | 20分 | 1〜3時間 | 3〜5時間 |
インスリンポンプ療法(CSII)
持続的にインスリンを皮下注入する方法です。詳細はインスリンポンプ療法のページをご確認ください。
インスリン注射の実際
注射部位
- 腹部:吸収が最も速く安定。追加インスリンに適する。
- 大腿部:吸収がやや遅い。基礎インスリンに適する。
- 上腕部:吸収速度は中間的。
- 臀部:吸収が最も遅い。
同じ部位に繰り返し注射すると、皮下脂肪の萎縮(リポジストロフィー)や肥厚(リポハイパートロフィー)が起こり、インスリンの吸収が不安定になります。注射部位は定期的にローテーションすることが重要です。
注射針
現代のインスリン注射針は非常に細く(31〜32G、長さ4〜6mm)、痛みはほとんど感じません。使い捨ての針を使用し、衛生面にも配慮します。
インスリンの保管
- 未開封:冷蔵庫(2〜8℃)で保管。有効期限まで使用可能。
- 使用中:室温(25℃以下)で保管。開封後28日以内に使用。
- 注意事項:直射日光・高温・凍結を避ける。車内への放置は厳禁。
インスリン療法の目標
インスリン療法の目標は、生理的なインスリン分泌をできるだけ模倣し、以下の達成を目指します。
- HbA1c 7.0%未満(個別化あり)
- 空腹時血糖 80〜130 mg/dL
- 食後2時間血糖 180 mg/dL未満
- 低血糖の回避
- 血糖変動(グリセミックバリアビリティ)の最小化
血糖管理の詳細は血糖コントロールとHbA1cのページをご確認ください。
インスリン療法と低血糖
インスリン療法の主な副作用は低血糖です。適切な用量調整、血糖モニタリング、糖質カウントによりリスクを最小化できます。詳細は低血糖の対策のページをご確認ください。
よくある質問
インスリン療法にはどんな種類がありますか?
主に2つの方法があります。①複数回注射法(MDI):基礎インスリン(长效)を1日1〜2回+追加インスリン(速効)を毎食前に注射。②インスリンポンプ療法(CSII):持続的にインスリンを皮下注入する。
基礎インスリンと追加インスリンの違いは何ですか?
基礎インスリン(长效インスリン)は24時間にわたって一定量のインスリンを供給し、空腹時血糖をコントロールします。追加インスリン(速効インスリン)は食事に伴う血糖上昇を抑えるために、毎食前に注射します。
インスリン注射は痛いですか?
現代のインスリン注射針は非常に細く(31〜32G)、痛みはほとんど感じません。注射部位を定期的にローテーションすることで、皮下脂肪の萎縮や肥厚を防ぐことができます。
インスリンの保管方法はどうすればいいですか?
未開封のインスリンは冷蔵庫(2〜8℃)で保管します。使用中のインスリンは室温(25℃以下)で保管可能で、開封後28日以内に使用します。直射日光・高温・凍結を避けてください。
インスリン療法で低血糖は起こりますか?
はい、インスリン療法の主な副作用は低血糖です。適切な用量調整、血糖モニタリング、糖質カウントによりリスクを最小化できます。詳細は低血糖の対策のページをご確認ください。
関連ページ
- 1型糖尿病とは — 病態・原因
- インスリンポンプ療法 — CSIIの仕組み・適応
- CGM — 持続血糖モニタリング
- 食事療法・カーボカウント — インスリン計算
- 低血糖の対策 — 症状・対応・グルカゴン
- 血糖コントロールとHbA1c — 目標値・測定の実際
- よくある質問(総合FAQ)