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エンパグリフロジン(ジャディアンス)、EMPA-REG OUTCOME試験で2型糖尿病の心血管リスクを有意に減らした。

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エンパグリフロジンは心血管リスクの高い2型糖尿病の心血管死を38%、心不全を35%、全死亡を32%有意に減少させ、心不全入院も減らす。

エンパグリフロジン(ジャディアンス)、EMPA-REG OUTCOME
EMPA-REG OUTCOME

Jardiance® demonstrated cardiovascular risk reduction in people with type 2 diabetes at high risk for CV events.
Empaglifozin is the only glucose-lowering agent to have demonstrated CV risk reduction.

EMPA-REGOUTCOME試験の結果が出るのを楽しみにしていました。想像以上の良い結果に驚いている。糖尿病治療にパラダイムシフトを起こすにじゅうぶんなインパクトを持っている。船橋市の糖尿病治療にも大きな影響を与えることは間違いない。全体でみると脳卒中の危険が増す懸念があると言われているが、日本人を含む東洋人で検討し直すと限りなくHRが1.0に近くなるようだ。

empa-reg outocomeに対しては様々な意見がある。私の意見。論文からはエンパグリフロジンの血圧効果作用が発揮されている印象を受けた。エンパグリフロジンの投与によって心血管イベントのみならず心血管イベントによる死亡が優位に減少しているところがすごい。

EMPA-REG OUTCOMEサブ解析では腎症の発症・悪化を抑制することが示された。

今回の素晴らしい結果は、利尿剤としてのエンパグリフロジンの作用が大きく関与しているのかも知れない。しかし、従来の降圧利尿剤の耐糖能障害に及ぼす影響を考えてみよう。先生方がご存知の通り、長期服用により低カリウム血症が生じ、膵β細胞のATP 依存性カリウムチャンネルが有効に作動しなくなる。末梢でのインスリン感受性も低下する。その結果、インスリンの分泌が抑制されるため血糖コントロール悪化をきたすと考えられている。SGLT2阻害薬は耐糖能障害をきたさない降圧利尿剤、否、血糖コントロールを改善する降圧利尿剤なのだ。

SGLT2を安全に使用するために、利尿剤併用例では利尿剤を減薬もしくは中止することも検討課題になるだろう。ループ利尿薬は緻密斑よりも前で効く。ヘンレ係蹄上行脚でのNa+の再吸収抑制がメインである。例えばフロセミドのようなループ利尿薬を併用しているとせっかくのSGLT2阻害が削がれてしまって効き目が落ちる。サイアザイドはご存知の通り遠位尿細管におけるNa+、Cl-の再吸収を抑制することで利尿効果を発揮する。SGLT2阻害薬と共存可能な仕組みだ。ループ利尿薬使用例でSGLT2阻害薬を使うのならSGLT2を利尿薬と考えて減薬することを考えるべきではないか。

用量に関していえば、リナグリプチンとの併用の論文でもみられたようにエンパグリフロジンは用量依存性はなさそうだ。25mgの剤形をつくっているが、10mgでじゅうぶんなのではないか。

<主な結果内容>

  • 主要評価項目の3P-MACEは14%のリスク減少させた。
  • 心血管死においても38%リスク減少させた。 
  • 非致死的心筋梗塞および非致死的脳卒中についても標準治療群との差は認められなかった。
  • 総死亡は32%のリスク減少が認められた。
  • 忍容性に関してはこれまでのデータ同様良好であった。

世界592施設、7,000名余りを対象にしたEMPA-REG OUTCOME 試験。心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者が対象にエンパグリフロジンの心血管リスクに対する長期安全性について検討する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。ヨーロッパが41%、米国20%、日本人は100名未満。登録患者には白人が多い。1次エンドポイントは心血管イベント死または非致死性心筋梗塞、もしくは非致死性脳卒中。これらを3 point MACEとして、プラセボに対するエンパグリフロジンの非劣性を示すことを目的としている。FDAガイダンスに従い、ハザード比の95%信頼区間の上限を1.3とし、この値を下回った場合には優越性について検討する階層型検定手順を用いることになっている。4point MACEも検討されており、それには細小血管症(UACR300以上)などが含まれる。このように、大血管障害だけでなく細小血管障害もついても知見が得られる見込みである。

EMPA-REG試験デザイン
試験デザイン

上図のように
プラセボ群
empagliflozin10mg
empagliflozin25mg
で比較している。

3 point MACEでエンパグリフロジンの優越性が認められた

主要評価項目の3P-MACEは14%のリスク減少させた。CVイベントリスクが高い2型糖尿病患者は1次予防、2次予防の両者が含まれている。このstudyは糖尿病罹病歴10年以上の患者が多く、それにじゅうぶんな治療を加えていくものである。ARB、スタチン、抗血小板剤などである。約7000例に対して、プラセボorエンパグリフロジン(10または20mg)を追加投与した無作為二重盲検比較試験。大血管イベントの既往がある患者を対象にしているところがポイント。なので、男性が全体の70%を占めている。ハイリスクな患者に層であり、ACCORDの結果などを見ると良い結果が出るとは限らない、不利な条件のstudyである。それにもかかわらず優越性が示されたのである、SGLT2 inhibiorは脱水リスクが強調され、このようなハイリスク患者には使いにくい印象が強くあった。正直、この試験は「非劣性」が出れば御の字であると思っていた。先日ご紹介したダパグリフロジンの試験は非劣性。詳細はこれかの発表を待ちたいが、心血管イベントリスクの高い患者には使いにくいとされてきたものが、一転してそのような患者に対してベネフィットがあるということになると、糖尿病治療におけるパラダイムシフトが起きる可能性がある。日本での適応症は2型糖尿病であるが、海外では1型に対する研究も進んでいる。SGLT2阻害薬の効果はインスリン非依存性であるため、尿からのブドウ糖排泄をすれば食後高血糖を抑制でき、追加インスリンが減らせるなど1型糖尿病にもメリットがある。現在は保険適用の問題があるが、早く船橋市の1型糖尿病にも使えるようになるといい。8/24 ダパグリフロジンの1型糖尿病保険適用拡大に向けた治験が日本でも始まる。

エンパグリフロジンの優れた作用が明らかになった。これは糖尿病治療にパラダイムシフトをもたらしうるインパクトを持っている。肥満の多い欧米に比べて痩せた患者の多い日本ではSGLT2 inhibitorのシェアはまだ4%程度に過ぎない。当然、船橋市の2型糖尿病患者さんに対する治療方針にも影響する。これからはジャディアンス(JARDIANCE)が多く処方されていく可能性がある。

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