1型糖尿病で体重が増える|インスリンと体型への向き合い方

インスリン療法を始めたあとに、体重が増えることがある

1型糖尿病の治療としてインスリンを始めると、体重が増えることがあります。これは珍しいことではなく、治療が始まって血糖値が安定してくると、それまで減っていた体重が戻っていく経過をたどることがあります。急に増えたように感じても、治療の効果として起こっている面があります。

このページでは、体重が増える理由、診断前に体重が減っていた理由、自己判断でインスリンを減らす危険、主治医と相談する項目を整理します。体重を落とす方法を紹介するページではありません。体型のことを治療のなかでどう扱うかを整理するためのページです。

診断前に体重が減っていた理由

1型糖尿病では、インスリンが不足すると、血液中の糖が細胞に取り込まれにくくなります。その結果、血糖値が高いまま尿から糖が排泄され、エネルギーが失われます。あわせて、体に蓄えられた脂肪が分解されて使われます。そのため、食べているのに体重が減ることがあります。

  • 高い血糖値が続き、尿から糖とともに水分が失われる
  • 糖が細胞で使われにくく、エネルギーとして利用できない
  • 体の脂肪や筋肉が分解されて使われる

治療が始まって血糖値が落ち着くと、失われていた水分が戻り、脂肪や筋肉も回復して、体重が元の水準に近づくことがあります。診断前の減量と治療後の増加は、同じ病気の経過のなかで起こっていることです。

インスリンと体重の関係

インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込むはたらきをもつホルモンです。取り込まれた糖はエネルギーとして使われ、余った分は体に蓄えられます。そのため、インスリンが不足していた状態から補充する状態になると、体に取り込まれる糖の量が変わり、体重の変化に関わることがあります。

  • インスリン量が増えると、糖が体に取り込まれ、蓄えられる量も増える方向に働く
  • 低血糖を防ぐための補食や間食が増えると、それに伴って必要なインスリン量も増えることがある
  • 食事の量や内容、活動量、睡眠の変化も体重に関わる
  • 成長期には、身長の伸びに伴って体重が増える

「インスリンを打つと太る」と単純に決まるものではなく、補食の回数、食事、活動量、成長など、複数の要素が重なっています。だからこそ、記録をもとに主治医と一緒に確認する形が現実的です。

体型が気になる気持ちは、それ自体が問題ではない

体型が気になること自体は、自然なことです。その気持ちがあることを責める必要はありません。一方で、体型への不安から治療の方法を変えてしまうと、危険な状態につながることがあります。気持ちを我慢するのではなく、治療を続けるうえで扱う情報として、診察で伝えてみてください。

危険なのは「自己判断でインスリンを減らす」こと

体重を減らしたいという理由でインスリンを減らしたり、注射をやめたりすると、血糖値が大きく上がり、ケトアシドーシスにつながることがあります。ケトアシドーシスは命に関わることがある状態で、早期の対応が必要になります。

インスリン量を変えるかどうかは、食事・活動量・血糖値の記録をもとに主治医が判断します。「体重が増えたので減らしたい」と感じたときは、そのまま伝えてください。状態の説明は糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、インスリン療法の基本はインスリン療法にまとめています。

主治医と相談する項目

  • 体重が増えた時期と、それまでの治療の変化
  • 食事の量と配分(分割してとる回数を含む)
  • 補食と間食の回数・量・タイミング
  • 日常の活動量と運動の内容
  • インスリン量(自己判断で変えず、記録を持って相談する)
  • 体重を測る頻度と、記録の残し方
  • 体型への不安の強さと、それが治療に与えている影響

成長期・思春期の場合

身長が伸びる時期には、体重が増えるのが自然な経過です。無理な減量は、身長の伸びや骨、月経の状態などに影響することがあります。成長の段階を踏まえた目標の置き方を、小児・思春期の診療に沿って相談してください。

無理な減量で起きること

  • 低血糖の危険が増える(食事量を落としてインスリン量が合わなくなる)
  • インスリンを減らす・中断する形の対処は、ケトアシドーシスにつながる
  • 必要な栄養が足りなくなる(成長期では身長や骨への影響)
  • 月経の乱れ、疲れやすさ、気分の落ち込みが起こることがある
  • 食べることや体重をめぐる悩みが強くなることがある

食事や体重をめぐる悩みが強くなっている状態が続くときは、早めに主治医に伝えることが大切とされています。治療のなかで相談できるテーマであり、1人で抱える必要はありません。相談先は相談先のページにまとめています。

記録と相談のしかた

  • 測る頻度を決めて、増減の傾向を見る(毎日でなくてもよい)
  • 食事の内容と量を、体重と同じ記録に並べて残す
  • 補食をとった回数と理由を書き分ける(低血糖のためか、嗜好か)
  • 1日の数値ではなく、1〜2週間の単位で見る
  • 診察には、記録と「気になっていること」を一言添えて持っていく

診察室でそのまま使える質問文

  • 体重が増えた理由を、治療の変化とあわせて確認したい。
  • 食事の量と配分を、体重の変化に合わせて見直したい。
  • 補食の回数を減らさずに調整する方法はあるか相談したい。
  • 活動量を増やす場合、低血糖の対策をどう考えればよいか。
  • 体重を測る頻度と、記録の残し方を決めたい。
  • 体型のことが気になって治療を続けるのがつらい。相談したい。

周りの人からの言葉に困ったとき

体型についての言葉は、応え方に困ることがあります。短く返す言葉を決めておくと、負担が減ります。

体重は治療のなかで見ているので、主治医と相談しています。

前より増えたけど、今は調整中です。

心配してくれてありがとう。必要なら説明するね。

自分の体型や治療について、どこまで話すかは自分で決めてよいことです。伝える範囲の整理はカミングアウトのページにまとめています。

よくある質問

インスリンを始めてから体重が増えました。もとに戻せますか。

治療が始まって血糖値が安定すると、それまで減っていた体重が戻っていく経過をたどることがあります。まずは増えた理由を主治医と一緒に確認するのが先です。食事の量と配分、補食の回数、活動量を記録して相談すると、調整のしかたを一緒に考えられます。体重を落とすことだけを目標にした自己流の方法は、低血糖やケトアシドーシスの危険を伴うことがあるため避けてください。

インスリンを減らせば痩せますか。

自己判断でインスリンを減らすと、血糖値が大きく上がり、ケトアシドーシスにつながることがあります。命に関わる状態になることがあるため、体重を減らす目的でインスリン量を変えることは避けてください。量の調整が必要かどうかは、記録を持って主治医が判断します。

診断前に体重が減っていたのはなぜですか。

インスリンが不足すると、血液中の糖が細胞で使われにくくなり、高い血糖値のまま尿から糖が排泄されてエネルギーが失われます。また、体の脂肪が分解されて使われます。そのため、食べていても体重が減ることがあります。治療が始まると、この状態が改善して体重が戻ることがあります。

標準体重まで落とす必要がありますか。

一律の目標体重があるわけではなく、年齢や成長の段階、体型、治療方針によって考え方が変わります。成長期には身長の伸びに伴って体重が増えることがあります。目標の置き方は、診察で個別に相談してください。

体重はどのくらいの頻度で測ればよいですか。

決まった回数があるわけではありません。診察時の測定に加えて、自宅で測る場合は、続けられる頻度(週に1回など)を決めて記録すると、増減の傾向を見やすくなります。測るたびに一喜一憂しにくい形にするのが続けやすさのポイントです。

補食や間食が多く、体重が増えている気がします。

低血糖のための補食と、嗜好としての間食は役割が違います。補食は低血糖を防ぐために必要なもので、自己判断で減らすと危険があります。回数・量・とる時間帯を主治医と整理する方法があります。食事の罪悪感については、別のページにまとめています。

体型が気になって、治療を続ける気持ちが下がります。

体型が気になること自体を否定する必要はありません。その気持ちは、治療を続けるうえで扱う必要がある情報なので、診察で伝えてみてください。食事や体重のことをめぐる悩みが強い状態が続くときは、早めに主治医に伝えることが大切とされています。

周りに「痩せたほうがいい」と言われます。

体型についての言葉は、応え方に困ることがあります。体重は治療のなかで見ていることを短く伝える形にすると、説明の負担が減ります。伝える範囲を自分で決めてよいことは、カミングアウトのページにまとめています。

主な出典

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • 日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」
  • 日本糖尿病学会(一般の方向け情報)「1型糖尿病はどのように治療するのか?」
  • 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」
  • 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「1型糖尿病」(一般の方へ)
  • 米国糖尿病学会(ADA)Standards of Care in Diabetes—2024 Section 5(Diabetes Care 2024;47(Suppl 1):S77-S110)

関連ページ

最終更新:2026年10月12日