自己血糖測定(SMBG)の重要性
自己血糖測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)は、1型糖尿病の治療において最も基本的かつ重要なセルフケアの一つです。血糖測定器(グルコメーター)を使って自分で血糖値を測定し、インスリン量の調整や低血糖・高血糖の予防に役立てます。
CGM(持続グルコースモニタリング)の普及が進んでいますが、SMBGは依然として血糖管理の基本であり、特にインスリン注射量の決定や低血糖の確認、CGM値の校正などに欠かせません。
血糖測定器の選び方
1型糖尿病の方が血糖測定器を選ぶ際の主なポイントは以下の通りです:
- 必要血液量:少ないほど穿刺時の負担が軽減されます(現在の主流は0.3〜0.6μL)
- 測定時間:5〜7秒が主流。機種によって異なります
- 測定範囲:10〜600 mg/dL程度をカバーする機種が一般的です
- メモリー機能:過去の測定値の保管件数や平均値表示の有無
- データ管理:スマートフォン連携やクラウド同期の有無
- テストストリップのコスト:毎日複数回測定するため、ランニングコストは重要な要素です
- 保険適用の有無:1型糖尿病では保険適用となる機種があります
測定のタイミングと頻度
1型糖尿病における血糖測定の推奨タイミングは以下の通りです:
| タイミング | 目的 |
|---|---|
| 起床時(空腹時) | 基礎インスリン量の評価、起床時の高血糖(暁現象など)の確認 |
| 食事前 | 追加インスリン(食前インスリン)の投与量決定 |
| 食後2時間 | 食後血糖値の確認、カーボカウントの精度評価 |
| 就寝前 | 夜間低血糖の予防 |
| インスリン注射前 | 安全なインスリン投与量の確認 |
| 運転前・運転中 | 低血糖による事故防止 |
| 体調不良時 | シックデイ時の頻回測定(2〜4時間ごと) |
| 低血糖症状を感じた時 | 症状の確認と適切な対応の判断 |
正しい測定手順
- 手洗い:石けんと流水で手をよく洗い、完全に乾かします。アルコール綿を使用する場合は完全に乾燥させてから穿刺してください
- 穿刺部位の準備:指の側面(腹側ではない)を穿刺部位として選びます。毎回同じ場所を避け、左右の指をローテーションしましょう
- 穿刺:ランセット(穿刺器具)を使用して指先を穿刺します。穿刺深度は皮膚の厚さに応じて調整します
- 採血:軽く指を押し、十分な血液量(テストストリップの必要量)を確保します
- 測定:テストストリップに血液を吸収させ、測定器に挿入して結果を待ちます
- 記録:測定値とともに、食事内容・インスリン量・活動などを手帳やアプリに記録します
測定値の解釈と活用
測定した血糖値は、以下のように活用します:
- インスリン量の調整:測定値に基づいて追加インスリン量や基礎インスリン量を調整します
- カーボカウントの精度向上:食後血糖値を確認することで、インスリン/炭水化物比の精度を高めます
- 低血糖の早期発見:目標値以下(70 mg/dL未満)の場合は速やかに糖質を補給します
- 血糖パターンの把握:日々の測定値を蓄積することで、時間帯や食事による血糖変動パターンを把握できます
血糖測定器とCGMの使い分け
CGMを併用している場合でも、以下の場面ではSMBGによる確認をおすすめします:
- CGMの値が症状と合わないと感じた時
- CGMの値が急激に変化している時
- 低血糖または高血糖が疑われ、治療判断が必要な時
- CGMセンサー交換後24時間以内(機種によっては精度が安定しない期間)
- CGMアラートが鳴った時の確認
血糖測定のコツと注意点
- 穿刺部位のアルコールが乾く前に測定すると値が低くなることがあります
- 手が冷たいと血流が悪くなり、十分な血液量が得られないことがあります。手を温めてから穿刺しましょう
- 使いかけのテストストリップは湿気や高温に弱いため、キャップをしっかり閉めて保管してください
- 測定器のコード(校正番号)がテストストリップのコードと一致しているか確認してください(非自動コーディング機種の場合)
- 高温多湿の場所での保管は避け、取扱説明書に従った管理を心がけましょう
穿刺(採血)の痛みを減らす工夫
指先は感覚が鋭い部位で、1日に何度も穿刺すると痛みが積み重なります。痛みの多くは「刺す場所」と「深さ」の見直しでやわらげることができます。痛みを我慢して測定そのものが負担になると、測定の回数が減り、血糖の動きを把握しにくくなります。
- 指先の中央を避け、側面を使う:指先の中央は物に当たって感覚が鋭く、痛みが残りやすい部位です。爪の横の側面を選ぶと痛みが少なくなります。
- 穿刺部位を順番に変える:同じ指・同じ場所を使い続けると皮膚が硬くなり、痛みが増し、血も出にくくなります。10本の指を順番に使い、前回とは違う指・違う側面を選びましょう。
- 深さは「血液が足りる範囲で浅く」:穿刺器具の深さは調整できます。深すぎると痛みが増すため、測定に必要な量の血液が得られる最小の深さに設定します。
- 針(穿刺針)は1回ごとに交換する:使い回すと先端が傷んで痛みが増し、感染の原因にもなります。交換の頻度は取扱説明書と主治医の指示に従ってください。
- 消毒用アルコールは十分に乾かしてから刺す:濡れたままだと沁みて痛く、測定値にも影響することがあります。
- 手を温めてから穿刺する:手が冷えていると血流が悪く、深く刺さないと血が出ません。ぬるま湯で1〜2分温める、指を軽く振るなどで血流を促します。
- 強くしぼらない:強く押し出すと組織液が混ざり、実際より低い値が出ることがあります。指の付け根からゆっくりもむように血液を出します。
- 穿刺後は清潔なガーゼで軽く圧迫する:止血をしっかり行い、穿刺部をかいたり触ったりしないようにします。
痛みが続く、指先がしびれる・感覚が鈍い、皮膚が硬く盛り上がる、内出血を繰り返すといった場合は、穿刺の方法が合っていない可能性があります。診察のときに穿刺部を見てもらい、穿刺具や穿刺部位の見直しを相談してください。測定そのものが負担になっている場合は、測定の回数を減らせる方法を主治医と相談することもできます。
記録を長く続ける工夫
血糖値の記録は、治療を調整するための材料です。「毎日すべてを残すこと」が目的ではなく、続かないのは意志の問題というより、記録の量と方法が生活に合っていないことが多いものです。目的と範囲を絞ると続けやすくなります。
- 何のために記録するかを決める:診察で相談したいこと(低血糖の回数、朝の値の傾向、食後の動きなど)を先に決めると、必要な記録が絞られます。
- 記録する項目を減らす:測定値と時間は測定器・アプリ・CGMの履歴に残ります。手書きのノートは、値だけでは分からない食事・インスリン・運動・体調などの出来事を中心にすると負担が軽くなります。
- 道具を自分に合ったものにする:測定器の履歴表示、専用アプリ、スマートフォンのメモ、紙のノートなど、続けられる方法を選びます。記録用紙は主治医に相談して受け取ることもできます。
- 途切れても再開する前提で考える:記録が抜けた期間があっても、そこから再開すれば十分です。まずは1日1回、決まった時間だけ記録するところから始めます。
- 受診の前に見返す:記録は毎日見直すためではなく、受診前に見返して「気づいたこと」を1〜2行にまとめるために使います。このメモが診察での相談の材料になります。
- 測定回数や記録の範囲は主治医と相談して決める:必要な測定回数は治療内容によって異なります。負担を感じて減らしたいときも、診察で主治医に相談してください。
記録や測定がつらいと感じる状態が続くときは、その気持ち自体も診察で伝えてください。日々の管理の疲れについては、下記のページで考え方をまとめています。
よくある質問
1日に何回血糖を測るべきですか?
強化インスリン療法(MDIまたはCSII)を行っている1型糖尿病では、1日4〜6回以上の測定が推奨されています。目安として、起床時・各食事前・就寝前の測定が基本です。主治医と目標頻度を相談してください。
血糖測定器の値と病院の検査値が違うのはなぜですか?
血糖測定器は指尖毛細血管血を測定するのに対し、病院の検査は静脈血漿を用います。また、測定器には±10〜15%程度の誤差が許容されています。大きな乖離がある場合は、測定器の精度確認や交換をご検討ください。
血糖測定器の買い替え時期は?
メーカーにもよりますが、多くの血糖測定器は数年ごとに新しい機種が発売されます。保険適用の機種であれば、主治医や医療機関に相談することで適切な機種を選ぶことができます。測定値に異常なばらつきを感じた場合も買い替えの目安です。
採血が痛くてつらいです。痛みを減らす方法はありますか?
まずは刺す場所と深さの見直しが基本です。指先の中央を避けて爪の横の側面を使い、前回と違う指を選び、測定に必要な血液が得られる範囲で深さを浅く設定します。針は1回ごとに交換し、消毒用アルコールは十分に乾かしてから穿刺します。痛みが続く、指先がしびれる、皮膚が硬くなる、内出血を繰り返す場合は、穿刺部を診察で見てもらい、方法の見直しを相談してください。
穿刺部位はどこを使えばよいですか?同じ指ばかり使ってしまいます。
指先の中央を避けて爪の横の側面を使い、10本の指を順番に使う(ローテーションする)のが基本です。同じ場所を続けて使うと皮膚が硬くなり、痛みが増して血も出にくくなります。どの指を使いやすいか、実際の穿刺部を見ながら診察で相談する方法もあります。
血が出にくいときは、強く押し出してもよいですか?
強くしぼると組織液が血液に混ざり、実際より低い値が出ることがあります。手をぬるま湯で温める、指を軽く振る、穿刺器具の深さ設定を1段階変える、などで改善を試みてください。それでも血が出にくい状態が続くときは、穿刺器具や測定器が合っていない可能性もあるため、主治医に相談してください。
穿刺針は毎回交換しないといけませんか?
穿刺針は基本的に1回ごとに交換します。使い回すと先端が傷んで痛みが増し、感染の原因にもなります。交換の頻度や使用後の針の廃棄方法は、取扱説明書と主治医・薬局の指示に従ってください。
毎日の記録が続きません。どうすればよいですか?
記録は治療を調整するための材料で、毎日すべてを残す必要はありません。測定値と時間は測定器・アプリ・CGMの履歴でも確認できます。手書きは出来事だけにする、1日1回決まった時間だけ記録する、受診の前に見返して気づいたことを1〜2行まとめる、といった方法で負担を減らせます。測定回数や記録の範囲を減らしたい場合も、診察で主治医に相談してください。
主な出典
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「血糖自己測定について」
- 米国糖尿病学会(ADA)Standards of Care in Diabetes—2024 Section 7 Diabetes Technology(Diabetes Care 2024;47(Suppl. 1):S126–S144)
関連ページ
- 1型糖尿病とは — 病態・原因・2型との違い
- カーボカウント(糖質早見表) — 測定値をインスリン量に活かす
- 低血糖 — 数値の見方と対応
- インスリン注射 — 打ち方・部位・ローテーション
- CGM(持続血糖モニタリング) — 機種ごとの特徴と選び方
- 1型糖尿病の疲れ(バーンアウト) — 毎日の管理がしんどいときの考え方
- 相談先の一覧 — 緊急時・こころ・学校・職場・制度の窓口
最終更新:2026年10月12日