1型糖尿病と就職・転職|障害者枠と一般枠の選び方

要点

  • 迷いどころは「応募の入口(障害者枠か一般枠か)」と「入社後の配慮の相談」の2つに分かれます。
  • 障害者求人(障害者枠)は、障害者手帳などの交付が応募資格になっていることが多いです。求人票の応募資格を確認してください。
  • 雇入れ後・在職中の差別禁止と合理的配慮の提供は事業主の義務です(障害者雇用促進法)。
  • 採否・給与・配慮の内容は企業ごとに異なります。この記事は、判断の材料と相談先を整理するものです。

1型糖尿病がある状態で就職・転職を考えるとき、「障害者枠で応募したほうがよいのか」「面接で病名を言うべきか」で迷いやすくなります。ここでは、応募の入口の選び方と入社後の配慮の相談を分けて整理します。制度の利用可否や採否は、求人票・企業・公的窓口で確認する前提でお読みください。

迷いどころは2つに分かれる(障害者枠と一般枠の比較)

「障害者枠か一般枠か」は、応募の入口の話です。一方、「入社後に配慮をお願いできるか」は採用後の話で、こちらは法律上の義務として整理されています。2つを分けて考えると、迷いが小さくなります。

障害者枠と一般枠の比較(一般的な整理)
項目障害者枠(障害者求人)一般枠
応募の入口障害者手帳などの交付が応募資格になっていることが多い障害の有無を条件としない求人
応募時の情報障害の状況や必要な配慮を、応募段階で確認されることがある病名を伝えるかどうかは本人が決める
入社後の配慮配慮の相談先が人事・障害者雇用担当に整っていることが多い配慮の相談は可能。ただし窓口は企業による
向くケース手帳があり、配慮を前提に職種を選びたい場合配慮が不要または軽微で、職種を広く見たい場合
注意点求人票の応募資格を必ず確認する配慮が必要な場合は、早めに伝えるほうが調整しやすい
※ 採否・給与・配慮の内容は企業ごとに異なります。

障害者枠で応募できるのはどんな場合か

障害者求人への応募は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などの交付を受けていることが応募資格になっていることが一般的です。これは、企業の障害者雇用率制度の対象となる障害者の範囲が、手帳の交付を受けている方などを基本としているためです。

  • 身体障害者手帳:1級から6級の方が対象とされています(重度は1級・2級)。
  • 療育手帳:知的障害があると判定された方。
  • 精神障害者保健福祉手帳:所持している方。
  • いずれも最終的には求人票の応募資格を確認してください。企業や求人によって条件が異なります。

手帳の交付を受けていない場合、障害者求人の応募資格を満たさないことがあります。その場合でも、一般枠で応募したうえで、入社後に配慮を相談するという選択肢があります(次章)。手帳の対象になるかどうかは自治体の審査で決まるため、迷う場合はお住まいの自治体の窓口にご確認ください。

一般枠で応募するときに整理しておくこと

一般枠で応募する場合、病名を伝える義務はありません。ただし、低血糖への備えなど安全に関わる情報は、伝えておくと働きやすくなります。どこまで伝えるかは本人が決めてよいことです(伝える範囲の考え方は人に伝えるときの整理で詳しく扱っています)。

場面別・伝える内容の整理
場面伝えると役立つ内容伝えない選択
応募・面接の前通院や体調管理で配慮が必要な時期があるか配慮が不要なら、伝えない選択も可能
面接の場安全に関わる情報(低血糖時の対応など)を伝えるかどうか業務に支障がない範囲なら、入社後に相談する方法もある
入社後低血糖のサインと対応、ブドウ糖の保管場所、緊急時の連絡先同僚全員に同じ内容を伝える必要はない
※ 伝えた範囲は、あとから広げても狭めてもかまいません。

入社後に使える制度と相談先

雇入れ後・在職中も、障害を理由とする差別は禁止され、合理的配慮の提供は事業主の義務とされています(障害者雇用促進法。人に伝えるときの整理でも同じ制度に触れています)。何が配慮にあたるか、どこまで対応できるかは、業務内容や職場の状況によって個別に変わります。

相談先の早見表
相談先相談できること注意点
勤務先の人事・障害者雇用担当勤務時間、休憩、通院、緊急時の対応などの調整配慮の可否は企業の判断。早めの相談が調整しやすい
産業医・健康管理部門体調と業務の両立、就業上の配慮会社と本人の間に入る立場。情報の扱いを事前に確認する
ハローワークの障害者窓口障害者求人の紹介、応募書類、面接の相談求人票の応募資格を確認できる
地域障害者職業センター職業評価、職場適応、事業主への助言公的機関。予約や対象の確認が必要
障害者就業・生活支援センター就業面と生活面の相談地域によって設置状況が異なる
※ 窓口の名称・体制は地域によって異なります。詳細は各機関にご確認ください。

職種による制限の実際

  • 「1型糖尿病だから一律にできない」とは限りません。運転、夜勤、高所作業などは、業務内容・低血糖の起こりやすさ・体制によって判断が変わります。
  • 判断は主治医・産業医・会社の間で行うものです。この記事では可否を断定しません。
  • 応募前に不安がある場合は、求人票の業務内容を確認し、ハローワークの障害者窓口や主治医に相談しておくと整理しやすくなります。

職場健診・保健指導での扱い

健診の結果や治療中の病気について、会社にどこまで伝わるかは、健診の実施主体や運用によって異なります。気になる場合は、健診の受診前に、健診機関や勤務先の担当者へ確認しておくと安心です。健診結果の説明や保健指導で聞かれたことへの答え方も、事前に整理しておくと負担が減ります。

診察室でそのまま使える質問文

  • 「障害者枠で応募を考えています。診断書や意見書が必要になる場合は、どのような内容になりますか。」
  • 「夜勤やシフトのある仕事を考えています。体調の面で、事前に確認しておくべきことはありますか。」
  • 「面接で、低血糖への備えをどこまで伝えるとよいでしょうか。」
  • 「転職活動中に通院の予定が重なりそうです。調整のしかたを相談できますか。」

よくある質問

障害者手帳がなくても障害者枠で応募できますか?

障害者求人の多くは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などの交付を応募資格としています。手帳がない場合は応募資格を満たさないことがあるため、まず求人票の応募資格をご確認ください。手帳の対象になるかは自治体の審査で決まるため、迷う場合は自治体の窓口にご相談ください。

面接で病名を伝える必要はありますか?

病名を伝える義務はありません。どこまで伝えるかは本人が決めてよいことです。ただし、低血糖への備えなど安全に関わる情報は、伝えておくと働きやすくなります。配慮が必要な場合は、応募や面接の早い段階で伝えるほうが調整しやすいことがあります。

障害者枠で採用されると給与が下がりますか?

給与は企業の賃金制度によって決まるため、障害者枠だから一律に下がるとは言えません。求人票の記載を確認し、不明な点は面接や事前の問い合わせでご確認ください。

一般枠で入社したあとから配慮を相談できますか?

相談できます。雇入れ後・在職中も、障害を理由とする差別は禁止され、合理的配慮の提供は事業主の義務とされています。まずは人事・障害者雇用担当や産業医など、相談しやすい窓口に伝えてください。会社での調整が難しい場合は、ハローワークの障害者窓口や地域障害者職業センターなどの公的機関に相談する方法があります。

低血糖のことを職場にどこまで伝えればよいですか?

「安全のための情報」として、低血糖のサインと対応、ブドウ糖の保管場所、緊急時の連絡先を伝えておくと役立ちます。同僚全員に同じ内容を伝える必要はありません。伝える相手と範囲は自分で決めてよいことです。

夜勤やシフトのある仕事は難しいですか?

一律に「難しい」とは言えません。勤務形態による影響は、低血糖の起こりやすさや職場の体制によって変わります。可否や調整の方法は、主治医・産業医・会社の間で確認するのが基本です。応募前に不安がある場合は、求人票の業務内容を確認したうえで相談しておくと安心です。

転職活動中の通院はどう調整すればよいですか?

面接や入社のタイミングで、通院が必要であることを伝えておくと調整しやすくなります。日程の調整が難しい場合は、ハローワークの障害者窓口で求人相談を受けるときに、通院の予定もあわせて相談できます。

主な出典

  • 厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
  • 厚生労働省「障害者雇用対策」(障害者雇用率制度を含む)
  • 愛知労働局「障害者雇用率制度上における「障害者」の範囲」
  • 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用率制度」
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)

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最終更新:2026年10月17日