要点
- 1型糖尿病そのものは、身体障害者手帳の対象となる障害に含まれていません(身体障害者福祉法の等級表に糖尿病の区分がありません)。
- ただし、合併症による障害(例:網膜症による視力の低下、腎症による人工透析など)が認定基準に該当する場合は、その障害について申請できる可能性があります。
- 「特定疾病療養受療証」の対象は3疾病(血友病・人工透析を実施している慢性腎不全・抗ウイルス剤を投与されているHIV)で、1型糖尿病は含まれません。
- 代わりに、高額療養費・小児慢性特定疾病・障害年金・自治体の助成・医療費控除などの制度があります。個別の該当可否は、自治体・年金事務所・保険者にご確認ください。
「1型糖尿病だと障害者手帳はもらえないの?」という疑問は、実際に多い相談です。結論から言うと、糖尿病そのものは身体障害者手帳の対象ではありません。ここでは、なぜ対象にならないのか、どのような場合に申請できるのか、代わりに使える制度は何かを整理します。制度の内容は変わることがあるため、最後は公的窓口でご確認ください。
身体障害者手帳の対象となる障害
身体障害者手帳は、法律で定められた身体の機能の障害を対象とする制度です。対象となる障害の区分は、おおよそ次のとおりです。
| 区分 | 主な対象 |
|---|---|
| 視覚障害 | 視力・視野の障害 |
| 聴覚・平衡機能障害 | 聴力の障害、平衡機能の障害 |
| 音声・言語・そしゃく機能障害 | 発声・発語・咀嚼の機能の障害 |
| 肢体不自由 | 上肢・下肢・体幹の機能の障害 |
| 内部障害 | 心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫・肝臓の機能の障害 |
1型糖尿病そのものが対象にならない理由
身体障害者手帳は、日常生活に制限を生じる身体の機能の障害を対象とする制度です。対象となる障害は法律(身体障害者福祉法)と等級表で定められており、糖尿病はその区分に含まれていません。そのため「インスリン注射をしているかどうか」ではなく、制度上、糖尿病という疾患そのものが対象にならないという整理になります。
「インスリン依存状態なら手帳が出る」という説明を見かけることがありますが、現在の制度では、治療内容だけで対象になるわけではありません。判断に迷う場合は、お住まいの自治体の障害福祉窓口にご確認ください。
合併症による障害は対象になりうる
糖尿病そのものは対象外ですが、合併症によって生じた障害が認定基準に該当する場合は、その障害について申請できる可能性があります。申請は「糖尿病の認定」ではなく、視力・腎臓など、該当する障害の認定として行われます。
| 合併症の例 | 関係する障害の区分 | 確認先 |
|---|---|---|
| 糖尿病性網膜症による視力の低下 | 視覚障害 | 主治医(眼科)・自治体の窓口 |
| 糖尿病性腎症による人工透析 | じん臓機能障害 | 主治医(腎臓)・自治体の窓口 |
| 末梢動脈疾患による切断など | 肢体不自由 | 主治医・自治体の窓口 |
代わりに使える制度
手帳の対象にならない場合でも、医療費の負担を軽くする制度はいくつかあります。使えるかどうかは、年齢・所得・加入している保険・お住まいの自治体によって異なります。
| 制度 | 内容 | 相談先 |
|---|---|---|
| 高額療養費 | 1か月の医療費の自己負担が一定額を超えたとき、超えた分の支給を受けられる | 加入している健康保険 |
| 小児慢性特定疾病医療費助成 | 対象疾病の治療について、医療費の自己負担分の一部が助成される | 自治体の保健所・窓口(対象疾病と年齢の要件を確認) |
| 障害年金 | 障害の状態により、年金が支給される場合がある | 年金事務所・自治体の窓口 |
| 自治体の医療費助成 | 自治体独自の助成制度がある場合がある | お住まいの自治体 |
| 医療費控除 | 1年間の医療費が一定額を超えたとき、所得税の控除を受けられる | 税務署・確定申告 |
よくある誤解
- 「インスリン注射をしていれば障害者手帳がもらえる」:現在の制度では、糖尿病そのものは対象障害に含まれていません。
- 「特定疾病療養受療証が1型糖尿病にも使える」:対象は血友病・人工透析を実施している慢性腎不全・抗ウイルス剤を投与されているHIVの3疾病です。1型糖尿病は含まれません。
- 「手帳がないと障害者枠で働けない」:障害者求人の応募資格は手帳などが基本ですが、一般枠で働きながら配慮を相談する方法もあります(就職・転職の整理)。
障害年金の考え方
障害年金は、障害の状態によって支給される年金です。3級は障害厚生年金としてのみ支給され、障害基礎年金は1級・2級が対象という違いがあります。加入していた年金制度や初診日、障害の状態によって判断が変わるため、見込みがあるかどうかは年金事務所で確認するのが確実です。
診察室でそのまま使える質問文
- 「合併症の状態から見て、身体障害者手帳の申請を考えたほうがよいでしょうか。」
- 「申請する場合、診断書はどのような内容になりますか。」
- 「障害年金の申請を考える場合、まず何を準備すればよいでしょうか。」
- 「医療費の負担を軽くする制度で、使えそうなものはありますか。」
よくある質問
1型糖尿病で障害者手帳はもらえますか?
糖尿病そのものは、身体障害者手帳の対象となる障害に含まれていません。そのため、糖尿病だけを理由に手帳の交付を受けることはできません。合併症による障害がある場合は、その障害について申請できる可能性があります。
インスリン注射をしていても対象になりませんか?
現在の制度では、治療内容ではなく障害の状態で判断されます。インスリン療法を行っているという事実だけでは、身体障害者手帳の対象にはなりません。
合併症がある場合はどうなりますか?
合併症によって生じた障害(視力の低下、腎臓の機能障害など)が認定基準に該当する場合は、その障害について申請できる可能性があります。該当するかどうかは、診断書をもとに自治体が審査します。主治医と自治体の窓口にご相談ください。
特定疾病療養受療証は使えますか?
特定疾病療養受療証の対象は、血友病、人工透析を実施している慢性腎不全、抗ウイルス剤を投与されている後天性免疫不全症候群(HIV)の3疾病です。1型糖尿病は含まれていません。
医療費の負担を軽くする制度には何がありますか?
高額療養費、小児慢性特定疾病医療費助成、自治体独自の医療費助成、医療費控除などがあります。年齢・所得・加入している保険によって使える制度が変わるため、加入先の健康保険やお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
障害年金は申請できますか?
障害の状態によっては対象になる場合があります。3級は障害厚生年金としてのみ支給され、障害基礎年金は1級・2級が対象です。加入していた年金制度や初診日によって判断が変わるため、年金事務所にご相談ください。
手帳がないと障害者枠で働けませんか?
障害者求人(障害者枠)への応募は、身体障害者手帳などの交付が応募資格になっていることが一般的です。手帳がない場合は一般枠で応募し、入社後に合理的配慮を相談する方法があります。詳しくは就職・転職の整理をご参照ください。
主な出典
- 厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則 別表第五)」
- 厚生労働省「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「内部障害」
- 全国健康保険協会「特定疾病療養受療証」
- 日本年金機構「障害年金」
- 厚生労働省「小児慢性特定疾病対策の概要」
- 厚生労働省「高額療養費制度」
関連ページ
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最終更新:2026年10月17日