1型糖尿病の診察で伝えたいこと|聞きにくいことも聞ける関係づくり

診察の時間は限られていますが、準備のしかたと伝え方で、相談できる内容は変わります。「何を話せばよいか分からない」「聞きたいことがあるのに遠慮してしまう」という状態から、治療方針を一緒に考えていくための整理をまとめました。

診察で相談できることの全体像

診察のテーマは血糖値だけではありません。生活の事情も含めて伝えると、治療の調整に反映できます。

  • 血糖値の変化 – どの時間帯に高い・低いか、測定していない時間帯はどこか
  • 低血糖 – 頻度、症状、起こった場面(夜間・運動後・空腹時など)
  • インスリン – 注射のタイミングと量の使い方、注射部位の状態、ポンプやカニューレのトラブル
  • 食事 – カーボカウントの実際、外食や間食、食べ方の困りごと
  • 運動・睡眠 – 活動量の変化、寝つきの悪さや夜中に目が覚めること
  • こころの状態 – 不安、落ち込み、毎日の管理の疲れ
  • 生活の背景 – 学校・職場・家族・介護・経済的な事情
  • 制度と費用 – 医療費助成、自立支援医療、仕事上の配慮
  • 妊娠・出産の予定 – 時期の相談、準備しておくこと

「治療と関係ないこと」と思っている生活の事情ほど、血糖値が動く理由になっていることがあります。

診察前に準備しておくと伝えやすいこと

前回からの変化を3行でまとめる

  • 変わったこと(体調・生活・仕事・家族の状況)
  • 困っていること(いちばん困っている順に1〜3つ)
  • 聞きたいこと(次の判断に必要なこと)

3行に収めると、診察の場で伝える順番に迷いません。項目は多いほどよいものではなく、伝えたいことを絞るほうが内容が残ります。

聞きたいことを順番に並べておく

話したいことが多いときは、いちばん聞きたいことを最初に伝えます。時間が足りないときは、残りを次回に回すことを提案してもかまいません。あらかじめ順番を決めておくと、伝え忘れが減ります。

数値と、そのときの事情をセットで伝える

「夜中の3時ごろに低い値が続いた」のように、値と起きた場面をセットにすると、調整の相談が具体的になります。睡眠時間、食事の時刻、仕事のシフト、介護や育児の状況も、値と並べて伝えると判断の材料になります。

伝えたいことの整理(そのまま書き写せる形)

診察の前に、次の項目を埋めておくと、読み上げるだけでも伝わります。

  • 前回からの変化 – (例)残業が増え、夕食が22時以降になった日が週に3回あった
  • 気になっている値 – (例)朝の空腹時の値が以前より高く、夜間に低い値が出た日が2回あった
  • 困っていること – (例)昼の注射の時間を確保しにくく、打つ時刻が遅れる日がある
  • 聞きたいこと – (例)基礎インスリンの量を調整する余地があるか
  • 治療についての希望 – (例)低血糖を減らすことを優先したい/起床時刻を一定にしたい

「注射が負担に感じる」「食事の調整がつらい」といった率直な内容も、治療を調整するための情報です。切り出し方に迷うときの言い方はカミングアウトのページの「診察室でそのまま使える質問文」にまとめています。

主治医と合わないと感じたとき

「話がかみ合わない」「伝えたことが伝わっていない」と感じることはあります。関係をすぐに変える必要はありません。次のような選択肢があります。

  • 伝え方を変えてみる – 一度に全部を伝えようとせず、いちばん困っていることを1つに絞ります。
  • 別の職種に相談する – 糖尿病療養指導士、看護師、薬剤師、管理栄養士など、診察とは別の場で相談できることがあります。
  • 記録をそのまま渡す – 口頭で伝えにくいときは、メモやCGMのレポートを渡す方法があります。
  • 別の医療機関の意見を聞く – セカンドオピニオンは、納得して医療を受けるために認められている方法です。一般的には現在の主治医に伝えたうえで紹介状や検査データを持参する形で行われ、保険が適用されない自費になることがあります。
  • 医療機関を変える – 通いやすさ、専門外来の有無、連携している職種など、続けやすい条件で選ぶことができます。かかりつけ医は自分で選んでよいとされています。

転院や紹介を希望するときは、その旨を伝えることで手続きが進みます。相談できる窓口は相談先の一覧をご参照ください。なお、このサイトでは個別の診療相談には対応していません。

診察のあとに疲れてしまう日が続くときは、その負担自体も治療の情報です。1型糖尿病の疲れ(バーンアウト)、眠りにくさは睡眠、食事の悩みは食事の罪悪感でまとめています。診察に持っていく記録の整理はHbA1cとTIRとCGMをご参照ください。

よくある質問

診察で何を伝えればよいか分かりません。何から話せばよいですか?

「前回からの変化」「気になっている値」「困っていること」「聞きたいこと」の4つを、短いメモにしておく方法があります。いちばん困っていることを最初に伝え、残りは時間に応じて話すと伝え忘れが減ります。値だけでなく、睡眠・食事の時刻・仕事や家庭の事情も一緒に伝えると、調整の相談が具体的になります。

聞きたいことがあるのに、つい遠慮してしまいます。

遠慮してしまうことは少なくありません。メモに順番を書いておき、最初に「今日はこれを聞きたい」と伝える方法があります。医師以外のスタッフ(糖尿病療養指導士・看護師・薬剤師など)に先に相談しておくこともできます。1回で全部を聞こうとせず、次回に回す前提で臨むと気持ちが軽くなります。

診察の時間が短く、伝えきれません。

伝えたい内容を優先順位の高い順に並べ、最初にいちばん聞きたいことを伝えると、時間が足りなくなっても要点は残ります。口頭で伝えにくいときは、メモやCGMのレポートをそのまま渡す方法もあります。残りを次回に回すことを自分から提案してもかまいません。

診察の前にメモを用意するとき、どの項目を書けばよいですか?

前回からの変化、気になっている血糖値(時刻と場面つき)、困っていること、聞きたいこと、治療についての希望の5項目が基本です。それぞれ1〜2行でかまいません。注射やポンプのトラブル、眠りや食事の変化、生活上の出来事を添えると、判断の材料がそろいます。

主治医と合わないと感じています。どうすればよいですか?

まず伝え方を変えてみる方法があります。伝えたいことを1つに絞る、記録をそのまま渡す、糖尿病療養指導士など別の職種に相談する、といった方法です。それでも続けにくいと感じるときは、別の医療機関の意見を聞く(セカンドオピニオン)、医療機関を変えるという選択肢があります。かかりつけ医は自分で選んでよいとされています。

セカンドオピニオンを受けたいときは、どうすればよいですか?

一般的には、現在の主治医に伝えたうえで、紹介状や検査データを持参して受診します。納得して医療を受けるために認められている方法で、担当医に遠慮する必要はないとされています。保険が適用されず自費になること、費用が医療機関ごとに異なることは、事前に確認しておくと安心です。

低血糖や高血糖のことを、怒られるのではないかと不安です。

値の記録は、振り返りと調整の材料として使われます。低血糖や高血糖が起きたときの状況(食事・運動・睡眠・体調・仕事の予定)を一緒に伝えると、原因の見当をつけやすくなります。伝えにくさを感じるときは、その気持ちも含めて話してみてください。

気持ちの落ち込みも診察で話してよいのでしょうか?

話してかまいません。血糖値の変動や毎日の管理の負担は、気持ちの状態と影響し合います。診察で扱いにくいと感じたときは、相談できる窓口を利用する方法もあります。相談先は関連ページの「相談先の一覧」にまとめています。

主な出典

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • 米国糖尿病学会(ADA)Standards of Care in Diabetes—2024 Section 5: Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes(Diabetes Care 2024;47(Suppl. 1):S77–S110)
  • 厚生労働省「上手な医療のかかり方.jp」(かかりつけ医をもとう)
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「セカンドオピニオン」(2024年6月17日更新)

関連ページ

最終更新:2026年10月14日